脚本は直木賞作家・金城一紀の書き下ろし。自ら企画を作り提案し、小栗旬に当て書きしたとか。「強い光があればその分、濃い影ができる」といった心憎いセリフが随所にちりばめられている仕掛けも、さすが言葉を扱う作家ならでは。
今回のチャレンジは大成功ではないでしょうか。次にまたこうした制作スタイルのドラマ作りが生まれてくる、呼び水になって欲しい。
振り返れば、木曜9時に2本並んだ刑事ドラマの前評判は、まったく違っていた。「MOZU-百舌の叫ぶ夜」(TBS系)が期待値として大きくリードし、視聴率も優位にスタート。しかし、途中で「BORDER」が逆転してみせた。
つきつめたところ、「MOZU」は複雑な謎がありすぎて、しかし展開は遅々としている。西島秀俊演じる主人公の倉木が「いったい何に向き合おうとしているのか」かが判然としない。
「MOZU」と「BORDER」の人気の差の理由が、このあたりに見つかりそう。「MOZU」の丁寧なロケ、質の高い映像表現や役者の意気込みに期待していただけに少し残念。「MOZU」に「BORDER」の何分の一かの「カタルシス」があれば……いずれにせよ作品性の高いドラマの時代、本格派の切磋琢磨の時代が幕を開けたことを確信。ドラマ好きとしては大歓迎です。