スポーツ

巨人黄金時代の5番手捕手が語る「プロで成功する秘訣」とは

 プロ野球界は交流戦が花盛りだが、グラウンドで活躍する選手がいる一方で、ベンチを温める選手、ベンチにすら入れぬ選手がチームには存在する。スポーツライターの永谷脩氏が、常勝軍団・巨人の“第5の捕手”のエピソードを綴る。

 * * *
 今年のオールスターは西武ドーム(7月18日)、甲子園球場(同19日)で行なわれる。しかしこのところのオールスターは、今ひとつ盛り上がりに欠ける気がするのはなぜだろう。

 それは今の巨人に、「本当のスター」がいなくなってしまったからかもしれない。例えば1958年のオールスターには、巨人から藤田元司、藤尾茂、川上哲治、長嶋茂雄、広岡達朗、坂崎一彦、宮本敏雄、与那嶺要らが出場した。王貞治がいなくとも(翌年入団)、どこからでも本塁打が打てる迫力がある、まさに巨人の本格的な黄金時代が始まろうとしていた時だった。

 この年、島根出身の1人の捕手が巨人でデビューした。名を竹下光郎という。私にとってとても思い出深い選手である。その頃私は中学受験に失敗し、友人たちとぼんやり多摩川を眺めていた。河辺にはオハグロトンボが飛んでいる。眼下には巨人の練習グラウンドがあり、竹下はそこで汗を流していた。

 その時、グラウンド整備をしていたキーパーが、竹下に向かって顎をしゃくった。目線の先には、背の高い投手がいる。「受けてやれ」ということだ。土に正の字を書きながら、懸命に球を受ける竹下。30球を投げ終えたところで、その投手は「サンキュー」と言い残し、土手の際に停めてあった車に乗って去って行った。竹下はというと、土手沿いを合宿所に向かってブラブラ歩き始めた。

 我々は年齢の近いプロ1年生がなんだか不憫になり、彼に同行した。私が、なぜそこまで差がつくんですかねと聞くと、彼はニヤリと笑いながら言った。

「巨人には常にスターと控えがいる。俺のような5番手の捕手なんて“壁”みたいなもんさ」

 そして「プロで成功するにはどうすればいいと思う?」と聞いてきた。わからず首を振ると、

「意地が悪くないとダメなんだ」

 静かでゾッとする言葉だった。

関連記事

トピックス

初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
芸能活動を再開することがわかった新井浩文(時事通信フォト)
「ウチも性格上ぱぁ~っと言いたいタイプ」俳優・新井浩文が激ヤセ乗り越えて“1日限定”の舞台復帰を選んだ背景
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン
小説「ロリータ」からの引用か(Aでメイン、民主党資料より)
《女性たちの胸元、足、腰に書き込まれた文字の不気味…》10代少女らが被害を受けた闇深い人身売買事件で写真公開 米・心理学者が分析する“嫌悪される理由”とは
NEWSポストセブン
ラオスを訪問された愛子さま(写真/共同通信社)
《「水光肌メイク」に絶賛の声》愛子さま「内側から発光しているようなツヤ感」の美肌の秘密 美容関係者は「清潔感・品格・フレッシュさの三拍子がそろった理想の皇族メイク」と分析
NEWSポストセブン
国宝級イケメンとして女性ファンが多い八木(本人のInstagramより)
「国宝級イケメン」FANTASTICS・八木勇征(28)が“韓国系カリスマギャル”と破局していた 原因となった“価値感の違い”
NEWSポストセブン
今回公開された資料には若い女性と見られる人物がクリントン氏の肩に手を回している写真などが含まれていた
「君は年を取りすぎている」「マッサージの仕事名目で…」当時16歳の性的虐待の被害者女性が訴え “エプスタインファイル”公開で見える人身売買事件のリアル
NEWSポストセブン
タレントでプロレスラーの上原わかな
「この体型ってプロレス的にはプラスなのかな?」ウエスト58センチ、太もも59センチの上原わかながムチムチボディを肯定できるようになった理由【2023年リングデビュー】
NEWSポストセブン