翻って現代は「何でもあり」の時代である。アベノミクスという耳当たりのいい言葉はあたかも自由な競争が奨励されているかのように聞こえるが、実は一発逆転の発想が尊重されず、権力をもつ側、大資本側に都合よくできている。
事実、潤沢な制作費と宣伝費を提供できるメジャー作品ばかりが幅を利かせている。ギャンブルの胴元と賭け主が表面上は対等の関係であるかのように見えても、実際は必ず胴元が儲かるようにできているのと同じことだ。
そんな「強いものが必ず勝つ時代」が、生粋のアウトローたちの拠り所であるVシネマにとって厳しいことは仕方がない。しかし、だからこそ私は彼らの逆襲を願わずにはいられないのである。
文■谷岡雅樹(ノンフィクション作家)
●谷岡雅樹(たにおか・まさき):1962年北海道生まれ、ビデオレンタル業界草創期から、制作、販売、流通、宣伝、批評に携わる。1999年『Vシネマ魂』(四谷ラウンド)を発表し、以降ノンフィクション作家として活躍。2010年度より『キネマ旬報』ベストテン選考委員も務めている。
※週刊ポスト2014年7月11日号