しかし、今回はっきりしたことは、オールドメディアがいくら自殺報道を抑制しても、スマホをはじめとした端末がここまで普及した社会にあっては、自殺報道は止まらないという現実だ。

 中年男性の様子を撮り、それをSNSなどで発信した人々の気持ちはそれぞれだったと思う。「怖くなって」思わず誰かと情報を共有せずにはいられなくなった人もいたようだし、「これはニュースだ」と悪気なく流した人もいたはずだ。

 ただ、中には自分の個人メディアを盛り上げる「格好のネタだ」と狙ってUPした人もいただろう。次々と作成された「まとめサイト」には、「PV(=小遣い)の稼ぎ時だ」というモチベーションが働いていたかもしれない。

 そのように動機や意図が個々別々で、好き勝手に発信される自殺報道と大拡散は、いくらWHOの注意に沿って啓蒙活動を行っても、抑え込むことは難しい。個人のモラルに訴えても、どうしたって限界がある。私も含めた人々から下衆な好奇心が消えない限り……。

 誤解を恐れず書けば、今回の出来事は、政治的な演説の後にガソリンをかぶって、という自殺(未遂)だったから、まだ良かった。そこまで今の政治に対する怒りを抑えきれない人は稀なので。また、あの写真や動画からは、抗議のための焼身というより、「自暴自棄」感のほうが強く伝わった。中年男性の行動に共鳴した人はほとんどいなかったと思われる。

 だが、これが、例えば若い女性が同じ歩道橋の鉄枠上にふらふらと立って、そこからアスファルトの道路に飛び降りた、という出来事だったらどうか。亡くなってしまった女性が使っていたSNSの書き込みが発見され、それが「わかるわかる」という内容で大拡散されたらどうなるか。

 天が落ちてくるのではないかと無用な心配をする杞憂だったらいい。しかし、この心配はいつ現実化してもおかしくない新しい自殺報道問題であり、ネットを使う我々は全員問題の関係者になりうる。そう心得ておきたい。

関連キーワード

関連記事

トピックス

裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
海外向けビジネスでは契約書とにらめっこの日々だという
フジ元アナ・秋元優里氏、竹林騒動から6年を経て再婚 現在はビジネス推進局で海外担当、お相手は総合商社の幹部クラス
女性セブン
岸信夫元防衛相の長男・信千世氏(写真/共同通信社)
《世襲候補の“裏金相続”問題》岸信夫元防衛相の長男・信千世氏、二階俊博元幹事長の後継者 次期総選挙にも大きな影響
週刊ポスト
女優業のほか、YouTuberとしての活動にも精を出す川口春奈
女優業快調の川口春奈はYouTubeも大人気 「一人ラーメン」に続いて「サウナ動画」もヒット
週刊ポスト
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
真剣交際していることがわかった斉藤ちはると姫野和樹(各写真は本人のインスタグラムより)
《匂わせインスタ連続投稿》テレ朝・斎藤ちはるアナ、“姫野和樹となら世間に知られてもいい”の真剣愛「彼のレクサス運転」「お揃いヴィトンのブレスレット」
NEWSポストセブン
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
デビュー50年の太田裕美、乳がん治療終了から5年目の試練 呂律が回らず歌うことが困難に、コンサート出演は見合わせて休養に専念
女性セブン
今回のドラマは篠原涼子にとっても正念場だという(時事通信フォト)
【代表作が10年近く出ていない】篠原涼子、新ドラマ『イップス』の現場は和気藹々でも心中は…評価次第では今後のオファーに影響も
週刊ポスト
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
破局した大倉忠義と広瀬アリス
《スクープ》広瀬アリスと大倉忠義が破局!2年交際も「仕事が順調すぎて」すれ違い、アリスはすでに引っ越し
女性セブン
大谷の妻・真美子さん(写真:西村尚己/アフロスポーツ)と水原一平容疑者(時事通信)
《水原一平ショックの影響》大谷翔平 真美子さんのポニーテール観戦で見えた「私も一緒に戦うという覚悟」と夫婦の結束
NEWSポストセブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン