このようにして韓国人との間に生まれた子供は「ライダイハン」と呼ばれる。「ライ」は混血、「ダイハン」は韓国を意味する蔑称だ。
ベトナムには最大で3万人のライダイハンがいると推計される。その多くは戦争終結後、ベトナムに流入した韓国人ビジネスマンと現地女性の間にできた子供と言われるが、韓国兵のレイプによって生まれたライダイハンがいるのは紛れもない事実だ。韓国兵が現地の売春婦を妊娠させるケースも少なくなかった。
1969年に志願兵としてベトナムに渡った韓国人男性が匿名を条件に語る。
「ベトナム南部には米兵や韓国兵を相手にした売春街が点在していました。売春婦が客を求めて街の食堂に来ることもあった。兵士の多くは20代の若者ですし、過酷な任務で募るストレスや不安を解消するため麻薬に手を出したり、売春婦に相手をしてもらうことも珍しくありませんでした」
元南ベトナム政府軍の兵士で、ライダイハンの里親になったチャン・デュイ・リエムさんが証言する。
「私が韓国兵とよく遊びに行ったのは、猛虎師団の基地があったビンディン省クイニョン市内のバーです。ここでは、気に入った女性がいるとわずかなチップで外に連れ出すことができた。のちに私が引き取った子供も、そうした女性と韓国兵の間に生まれたライダイハンです」
リエムさんに引き取られたのは、当時1歳だったチャン・ティ・デュンさん(46)だ。
「母は生後間もない私をゴミ捨て場に放置したそうです。韓国兵との間にできた子供と知れ渡ったら売春婦ということがばれてしまいますし、やむを得ぬ決断だったのでしょう。実の子と分け隔てなく私を育ててくれた父(リエムさん)に感謝しています」
※SAPIO2014年8月号