現実を写す鏡とは対照的に、ありえない世界を描くドラマの代表格が「ドクターX ~外科医・大門未知子~」(テレビ朝日系木曜午後9時)。手術室で怒鳴り合う、米倉涼子の痛快さ。「私、失敗しないので」とのたまう、現実には存在しえない炸裂女医キャラ、胸がすく。米倉さんのスラリと長い足が象徴するような、切れ味あるセリフで日頃のうっぷんを晴らしたい人は、たくさんいる。それが今期も高視聴率を支えていくのでは。

 描かれた世界そのものには正直、あまり惹かれないのですが、「女優」を目当に視聴してみたいドラマもあります。

 まずは「SAKURA~事件を聞く女~」(TBS系月曜午後8時)の仲間由紀恵。つい先月まで朝ドラで放った「蓮子人気」の続きを、どう見せてくれるのか。仲間さんの目だけの演技は出色ですし。

 目といえば、「すべてがFになる」(フジテレビ系火曜午後9時)の武井咲も、目だけで語る技量あり。なかなか視聴率に恵まれない女優だけれど、演技は老成すら感じます。とは言っても、ドラマの内容は凡庸で子どもっぽい推理モノになりそうな、いやな気配が……。

 かたや、独自のタイミングで先行スタートしているNHK夜のドラマ群。「ボーダーライン」(土曜午後9時)、「さよなら私」(火曜午後10時)、どちらも鳴り物入りで始まったけれど……。「ボーダーライン」の藤原紀香は、救急救命士・救急隊の隊長という設定。これが痛い。とても見えない。なんだか友近の、なりきりコントを見ている気分になってしまう。「さよなら私」でW主役の永作博美と石田ゆり子も、自分たちの役に混乱中という印象。

 同じ石田さん、「MOZU Season2~幻の翼~」(TBS系木曜午後9時)では、すさまじく怖くて存在感、切れ味あり。シーズン2が始まった「MOZU」というドラマ、やっぱり映像美。見せ・魅せるクオリティドラマになると期待しています。

 まだまだ始まったばかりのドラマも多いこの時期。バラエティ豊かなラインナップ、今後の展開に期待しましょう。

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