もちろん、つか芝居にはこれまで広末涼子や黒木メイサなどたくさんのアイドル女優が出ています。つか芝居に出れば誰でも変われる、というほど単純ではない。アイドルという偶像に、向こう側があることを知り、その向こう側まで突き抜けたいと強い意志をもって脱出を試みた人しか、変わっていけないはすです。
石原さとみの場合、舞台芝居の向こう側へと突き抜け、そして今、テレビ画面という枠組にもう一度、自覚的に帰ってきている。その「振幅」を味方につけた、数少ない女優の一人でしょう。
もう一つ、この「ディア・シスター」というドラマの仕掛けも秀逸です。石原さとみの「幅」を見せる力を発揮しています。美咲は、秘密の日記に記した「課題」を、毎回一つ一つクリアしていく。それは、決して自分のためではない。すべては姉のため。一見、天衣無縫で自分勝手に見える美咲の立ち振る舞いも、実は、姉が幸せを手に入れるための「パフォーマンス」か……。うわべと真実、二つの「幅」を見せる密かな仕掛けが効いています。
今の時代、「ハイブリッド」と聞けばガソリンと電気、両方で走る車のことを思い浮かべますが、もともとの意味は「異種混合」。石原さとみは、アイドルと見せ物、エロからボーイッシュまで、闘士からキャバ嬢まで、その異種混合ぶりが魅力。
ハリウッド女優より上質な燃費の「ハイブリッド女優」に到達しつつある。そのハイブリッドぶりを一層磨き、充実させていってほしいものです。