国際情報

腐敗幹部の自殺が流行 習近平体制22か月で自殺者と不明者7700人

 地面を揺るがすような大きな音とともに、アスファルトの道路に真っ赤な血潮が広がる。北京市中心部から、車で30分ほど走ったところにある中国人民解放軍海軍大院の100号楼(ビル)。中国版ツイッター「微博(ウェイボー)」によると、倒れた人物は海軍副政治委員の馬発祥・中将。
 
 呉勝利・海軍司令官、劉暁光・海軍政治委員に次ぐ海軍のナンバー3という軍最高幹部の1人。馬氏は15階の執務室の窓から飛び降り、覚悟の自殺だった。軍首脳は直ちに箝口令を敷いたが、馬氏の壮絶な飛び降り自殺は瞬く間に軍内に広がった。ジャーナリストの相馬勝氏が中国の異常事態をレポートする。

 * * *
 中国海軍では2014年9月から11月までの3か月で、馬氏を含めて3人の将校が自殺しており、極めて異常な事態と言わざるを得ない。3人はいずれも汚職などの腐敗事件に絡んでいるとされ、中央軍事委員会規律検査委員会の取り調べを受けていた。香港メディアなどは「軍内で自殺が流行している」と報じているが、それは軍ばかりでなく、中国共産党・政府幹部にも蔓延しつつある。

 筆者は31省・自治区・直轄市における腐敗幹部の自殺や行方不明、海外逃亡の数字を記した内部文書を入手した。習近平指導部発足から2014年9月末までの22カ月間の記録で、自殺者は全体で1252人、行方不明者は6448人、海外逃亡者は8341人。総計1万6041人。自殺者と不明者を合わせると7700人と極めて深刻な数字となる。

 習近平国家主席は2012年11月の党総書記就任後初の演説で、汚職などの腐敗撲滅を公約に掲げ、「虎だろうが、蝿だろうが一緒に叩く」と豪語した。その成果を誇示するように、約2年後の2014年12月5日、党中央規律検査委員会は2012年12月4日から2014年10月末までの696日間で、公用車の私的利用や、公金を使った華美な宴会などによる飲食といった職権濫用など8項目の規定に違反した党員・幹部の数字を公表し、摘発件数は6万7737件で、処分されたのは8万9585人に上ったことを明らかにした。1日平均では128人だ。

 2014年春の全国人民代表大会(国会)では13年の1年間で、汚職などで立件された公務員は前年比8.4%増の5万1306人だったと発表されており、1日平均では140人が逮捕されたことになる。

関連記事

トピックス

AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト