芸能

NHK『まれ』 大泉洋が演じる父の「安手のギャグ」に疑問符

 好発進したNHKの朝ドラ。だが、気になる点がないわけではない。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 3月30日、注目の中でスタートしたNHK連続テレビ小説『まれ』。初回21.2%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と好調に発進したもようです。

 舞台は、石川県輪島市周辺をモデルとした漁村。第一印象として、オープニングがいい。CGを使わない。抜けるように美しい能登の海、青空。その映像にかぶさる歌声。人の声ってこんなに心地よく沁みるものだったのか。温かさ、膨らみ、躍動感といったものが一気に押し寄せてきて、ぐっと心を掴まれました。

 人の声がこうも前面に出てきて、印象に強く残るのはなぜ? 実はこのテーマ曲、メロディラインを奏でているのは人の声。ベースやパーカッションといった楽器の音は背後で響く。まさしく合唱。が揃いすぎない感じもまた、素人っぽくて初々しくて、実にいい。

 そこに、ヒロインを演じる土屋太鳳がひらりと大きく舞う姿が重なる。伸びやかで、輝いている。

 オープニングという短い時間に、五感を揺さぶる要素がたくさん散りばめられています。広告業界用語でいえば、「しずる感」に満ちたひととき。『希空~まれぞら』という主題歌の作詞も、実は土屋太鳳自身が手がけたとか。この時代にマッチする、手作り感覚。期待を高めるのには十分なオープニングです。

 では、その物語とは……都会から漁村へ夜逃げ同然でやってきた4人家族。主人公の稀が、さまざまな苦難を乗り越えて世界一のパティシエを目指す、という成長の物語。まだ筋はよくわからない中、能登で塩作りをする職人役の田中泯とその妻役・田中裕子の存在感ばかりが際立つ。

 田中泯といえば、映画『たそがれ清兵衛』(山田洋次監督)でお茶の間に広く知られるようになった人。映画では、暗闇ですさまじい斬り合いをするシーンが大絶賛され、以来、テレビ画面でも時々目にするようになりました。ご存じでしょうか? この方はそもそも前衛ダンサーであり、ペニスサック一つの裸姿で路上で躍り続けてきた。『花子とアン』の吉田鋼太郎に続いて、またもや舞台で叩き上げた燻し銀人材の登用です。

 ドラマの中で塩田に海水を撒くその背中に、ダンサーとしての長い月日と矜恃とがくっきりと刻印されている。あの立ち姿、なまじなことでは成立しない。揺るがなく踊り続けてきた身体美がそこに結晶しています。

 しずる感に満ちたオープニング、これから登場するヒロイン、名バイプレイヤー。多々見所があり期待できそうな朝ドラだからこそ。気になる点を語っておくとすれば……「あまちゃんの呪い」が影を落としすぎてはいないでしょうか?

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