ライフ

【書評】銃弾飛び交う現場で武装解除を指揮する異色の日本人

【書評】『紛争解決人 世界の果てで テロリストと闘う』森功著/幻冬舎/本体1400円+税

森功(もり・いさお):1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。週刊新潮編集部などを経て2003年からフリーのノンフィクション作家に。『平成経済事件の怪物たち』(文春新書)、『大阪府警暴力団担当刑事「祝井十吾」の事件簿』(講談社刊)など著書多数。

【評者】鈴木洋史(ノンフィクションライター)

 読み進めるうちに、こんな日本人がいるのかと驚くが、読み終えて、逆にこんな日本人はそうはいないだろうと思うと、国際社会において日本がどれだけの役割を果たせるのか心許なくなる。

 本書は、国連からの要請で世界の紛争地で武装解除を指揮して〈紛争解決人〉と呼ばれ、〈紛争地で最も有名な日本人〉となった伊勢先賢治(1957~)の異色の経歴・人物像と、その伊勢﨑の目を通して見た紛争地の現実を描いたノンフィクションだ。

 伊勢崎は建築家を志望して早大大学院で学んでいたとき、住民参加型の街作りを究めるため1983年からインドに留学。ムンバイにある世界最大のスラムに入り込み、住民の居住権獲得運動に従事した。

 1987年に帰国してからは世界各地に拠点を持つ国際NGOのスタッフとなり、1988年、世界最貧国のひとつ、シエラレオネに赴任。現地事務所のトップとして大規模な開発援助に携わったばかりか、大統領からの要請で市会議員となり、内戦状態になった国でまるで治安責任者のような役割を担わされた。

 シエラレオネで4年の任期を終えたあとはエチオピア、ケニアに合わせて5年ほど赴任し、1997年に帰国。すると今度は国連から要請を受け、2000年から1年間、インドネシアから解放されたばかりの東チモールで暫定政府の知事のひとりとなり、国連部隊、軍事監視団、文民警察を指揮した。任期の終盤には紛争当事者の兵士から武器を取り上げ、代わりに職を与える武装解除を手掛けた。

関連記事

トピックス

荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
舞台『シッダールタ』での草なぎ。東京・世田谷パブリックシアター(~2025年12月27日)、兵庫県立芸術文化センター(2026年1月10日~1月18日)にて上演(撮影・細野晋司)
《草なぎ剛のタフさとストイックさ》新幹線の車掌に始まり、悟りの境地にたどり着く舞台では立見席も
NEWSポストセブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
元交際相手の白井秀征容疑者(本人SNS)のストーカーに悩まされていた岡崎彩咲陽さん(親族提供)
《川崎・ストーカー殺人》「悔しくて寝られない夜が何度も…」岡崎彩咲陽さんの兄弟が被告の厳罰求める“追悼ライブ”に500人が集結、兄は「俺の自慢の妹だな!愛してる」と涙
NEWSポストセブン
「異物混入」問題のその後は…(時事通信フォト)
《ネズミ混入騒動》「すき家」の現役クルーが打ち明ける新たな“防止策”…冷蔵庫内にも監視カメラを設置に「なんだか疑われているような」
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン
赤穂市民病院が公式に「医療過誤」だと認めている手術は一件のみ(写真/イメージマート)
「階段に突き落とされた」「試験の邪魔をされた」 漫画『脳外科医 竹田くん』のモデルになった赤穂市民病院医療過誤騒動に関係した執刀医と上司の医師の間で繰り広げられた“泥沼告訴合戦”
NEWSポストセブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン