従来の免疫療法では、免疫力を高め、がん細胞への攻撃力を強めることに主眼が置かれていた。ところが、新薬はまったく新しい発想が取り入れられている。
「最近の研究で、がん細胞には免疫細胞の攻撃に“ブレーキ”をかけるタンパク質が備わっていることがわかりました。がん細胞の表面にある『PD-L1』というタンパク質が、免疫細胞の『PD-1』に働きかけると免疫の攻撃がストップしてしまう。この対応関係のことを『免疫チェックポイント』と呼んでいます。
もともと、『PD-1』は免疫系の暴走を防ぐための仕組みなのですが、がん細胞はそれを逆手にとっているわけです。その免疫チェックポイントを無効にして、免疫系が攻撃できるようにするのが、免疫チェックポイント阻害薬のメカニズムです」(前出・河上教授)
つまり、がん細胞がまとっている“鎧”を破壊し、免疫による攻撃を最大化する治療法なのである。
※週刊ポスト2015年6月5日号