しかしドラマの中で、そうしたスラップスティックの「型」を決めることができる勝地さんは、相当クールでスマートな役者に違いない。『あまちゃん』の「前髪クネ男」が前哨戦だったろうけれど、『ド根性ガエル』の「やんす」は、数段パワーアップしている。自己満足ではなく広い世代に伝わってくる面白みが滲む。
●桐谷健太
7月に最終回を迎えた『天皇の料理番』(TBS)。主人公・篤蔵の友達で、料理人見習い・画家志望の松井新太郎はぐうたらで、粋な男。篤蔵と新太郎は生き方も考え方も異なる。しかし、二人の間に流れる友情は、ドラマの中で強い印象と輝きを残した。
色気はたっぷり、女好き。しかし、すれてはいない。一瞬かいま見せる純粋さ。桐谷健太は、そんな「軽みと重み」を両方を含んだ人物をいきいきと描き出した。
役者としてお見事、と思った直後に、テレビ画面でまた遭遇。今度はドラマではなく、CMのau「三太郎」シリーズの中で。一見して婆娑羅のような風変わりな浦島太郎になりきっている。
印象的なのが、海辺で三線(さんしん)を弾き語るシーン。甘く切なく響く声、遠い視線が何ともいい。たった数秒間で誰かへの「一途な思い」を画面一杯に滲ませる力量。アッパレ。
これまでの桐谷さんはどちらかといえばアクが強くふざけた役柄の印象が強かった。しかし、この夏に判明。しっとり生真面目もオチャラけも両方いける。静と動、さまざまな素材を盛ることができる透明な「器」……。ぜひ今後の連ドラで、陰陽ある複雑な主人公を演じる姿を見てみたい。
菅田将暉、勝地涼、桐谷健太。それぞれタイプは違うけれど、しなやかでクール。今後にむけて期待が大きく膨らむ3人。そんな新しい才能に出会えることこそ、ドラマ鑑賞の大きな楽しみだ。