芸能

NHK朝ドラ『まれ』 「ネット掲示板の盛況」が最大の功績か

 このところヒット作が続いていたNHKの朝ドラ。今作はどうだったか。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 9月も残すところ2週間と少し。半年間続いたNHK朝ドラ『まれ』の幕もいよいよ閉じようとしている。「長かった」。私個人の感想を書けば、その一言。

 これまでの朝ドラを振り返ってみても、これほど長く感じたことは無かった。主人公に感情移入するのが難しかったから? 多くの視聴者にとって『まれ』はどのように映ったのだろうか。

 世の中を見回すと、『あまちゃん』のような大ブームの気配はなさそう。『マッサン』の時のウイスキーに匹敵するような「輪島塗ブーム」も、残念ながら感じられない。能登半島を訪ねる観光客の数は以前に比べて増えているのかもしれないが。視聴率についても特筆すべきことはなく、20%台に乗らない回もかなりあったもよう。巷でドラマが大きな話題になったりする熱気も、感じることはほとんどなかった。

 むしろ目についたのは、辛口の感想や批評的な意見の数々。特に、一般の人たちが利用するネット上の掲示板などで日々増殖する、真正面からの真面目な不満。コストも手間もかかっているはずの公共放送の看板ドラマがなぜ? 私になりにその理由を考えてみると……。

●一般的な常識や生活習慣からの逸脱

 東京から能登へ夜逃げしてきたという主人公・希(土屋太鳳)の家族は、赤の他人の家に住み着く。希は目上の人にズケズケと意見し、父は深い反省もなく自己破産を繰り返し、弟はデイトレードを生業にするといった風に、ことごとく「公共放送の朝ドラらしくない」、逆バリのキャラクターや演出が目立った。

 ケーキ作りのシーンも注目を集めた。無造作にゴムでまとめた希のヘアスタイル、菓子作りの器具や食材の扱い。「ずさん」「清潔感がない」「食べ物を大切にしていない」と批判が。

 要するに、日本人がふだん何気なく守っている一般常識、礼儀や習慣といった「枠組」を(意図してか?)ハズしていく脚本と演出は、『まれ』というドラマの際立った個性だった。

●エピソードの未回収

 突然、誰かがやってきて騒動を起こして消えていく。その後どうなったのか、詳細を描くことなくもまた次の出来事……。そうした場当たり的エピソードの継ぎはぎと未回収が続いた。

 半年間という長丁場のドラマの、筋立てとしてはあまりに粗雑。唐突に差し込まれる物真似芸、他番組のパロディといったコント風の作りも、お笑い好きのウケを狙ったつもりかもしれないが、空回り。 

関連記事

トピックス

維新はどう対応するのか(左から藤田文武・日本維新の会共同代表、吉村洋文・大阪府知事/時事通信フォト)
《政治責任の行方は》維新の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 遠藤事務所は「適正に対応している」とするも維新は「自発的でないなら問題と言える」の見解
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
遠藤敬・維新国対委員長に公金還流疑惑(時事通信フォト)
《自維連立のキーマンに重大疑惑》維新国対委員長の遠藤敬・首相補佐官に秘書給与800万円還流疑惑 元秘書の証言「振り込まれた給料の中から寄付する形だった」「いま考えるとどこかおかしい」
週刊ポスト
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
高市早苗首相の「台湾有事」発言以降、日中関係の悪化が止まらない(時事通信フォト)
《高市首相の”台湾有事発言”で続く緊張》中国なしでも日本はやっていける? 元家電メーカー技術者「中国製なしなんて無理」「そもそも日本人が日本製を追いつめた」
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《バリ島でへそ出しトップスで若者と密着》お騒がせ金髪美女インフルエンサー(26)が現地警察に拘束されていた【海外メディアが一斉に報じる】
NEWSポストセブン
大谷が語った「遠征に行きたくない」の真意とは
《真美子さんとのリラックス空間》大谷翔平が「遠征に行きたくない」と語る“自宅の心地よさ”…外食はほとんどせず、自宅で節目に味わっていた「和の味覚」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
「週刊ポスト」本日発売! 維新の首相補佐官に「秘書給与ピンハネ」疑惑ほか
NEWSポストセブン