「誤解しないでいただきたいのは、あくまで“仮の入居”だという点です。
高熱で2週間入院していた時に、寝たきりになってしまい足の状態が悪くなってしまった。足が良くなれば再び自宅に戻ってこられると思っています。今も時々、一時帰宅していますから」
現在の田中の様子を訊ねると、こう答えた。
「いまはホームで懸命にリハビリをしている最中です。自宅をバリアフリー化する話もあったのですが、本人が“リフォームする必要はない。しっかり(足を)治してから帰ってくる”と言ってるほどで、気弱になっているところは微塵もありません。長く入居することはないだろうと、タオルなどの日用品は全部、施設のものをお借りしているぐらいですから。本人はすぐにでも戻ってくるつもりでいます。
今後については仕事復帰とは言いませんが、(ファンに向けて)近いうちに何らかのご挨拶だけでもさせていただければと考えています。どうか、そっとしておいてください」
妻は夫が近くホームから帰ってくることを、まったく疑っていない。妻だけではない。足繁くホームを訪れている次女、そしてNHKで女性初のワシントン支局長になった長女も思いは同じだろう。
田中は2人の娘を前にすると、照れて面と向かって喋れないことがよくあったという。実生活で2人の娘を叱ったことがないのは有名な話だ。ただし「会話が少なくても親子の愛情がしっかり育まれることは、今の娘2人の成長した姿を見ればよくわかる」(前出・知人)との言葉通り、家族の結びつきは強い。
若い頃、撮影で各地を飛び回る日々が続き、家族と過ごす時間をほとんど持てなかったという田中だが、晩年になって苦難と闘う彼を支えているのは、その家族だった。
念願の自宅で家族に囲まれ、楽しそうに笑う田中の姿を見るのはいつになるのか。
「心配するな。すぐに戻ってくるからよぉ」──そんな“五郎”のセリフが聞こえてきそうだ。
※週刊ポスト2015年10月30日号