内観前は、離婚も考えていた、という浅井さんはこの後、息子に対しても、自分のおごりと見栄が彼を苦しめていたことに気づき、結果として、家庭の崩壊を回避することができた。
「別れたら、さぞさっぱりするだろうかと考えていましたが、私の夫への理解が足りなかったことに気づくことができました」(浅井さん)
一方で、内観によって離婚を決めた人もいる。昨年末、松居とほぼ同時期に内観をしたという水野麻美さん(仮名・38才・会社員)だ。
「結婚生活7年目。子供が欲しい夫と、仕事もあってすぐには欲しくなかった私の間で、ずっといさかいが絶えませんでした。さらに夫の浮気が発覚し、ここ1年間は家庭内別居状態で、関係は最悪。かといって離婚するのが正しいのかもわからず、時間ばかりが過ぎていったので、夫との関係を自分の中できちんと整理しようと思ったのが参加のきっかけです」(水野さん)
内観によって、両親や友達から“してもらったこと”を思い出し、いかに自分が傲慢だったかを知ることはできたものの、夫に対してはそうはいかなかった。7年に及ぶ結婚生活をふり返ると、溜まりに溜まった不満ばかりがあふれてきた。
共働きだったのに、夫が家事全般に協力的ではなかったこととか、そもそも価値観の違いとか…。
「内観を終えてはっきりわかったんです。“見ている未来が違う”って。だからすごく冷静に彼と話し合い、『離婚』という選択をしました。ただ、お互いにとって、最善の選択をしたと思っているので、離婚後も毎日LINEのやりとりをしていますよ。もともとすっごい仲の良い親友でしたから。もし内観がなかったら彼の浮気を追及して、離婚調停になっていたかもしれません。そしたら私は夫と親友を同時に失っていたと思います」(水野さん)
自分自身の変化に気がつき、物事の見え方が変わると、新たな幸せが目に飛び込んでくる。それが「離婚」という結論だったとしても、決して不幸ではないし、新たな人生の始まりだと理解できる。
※女性セブン2016年1月28日号