芸能

『あさが来た』は主人公不在で視聴者魅了した稀有な作品

4月2日に最終回

 いよいよフィナーレを迎える超人気朝ドラ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
 朝ドラ史上最高平均視聴率を保ってきた『あさが来た』も、今週いよいよ幕を閉じる。視聴率は上々で、週ごとの平均で20%を割ったことがなく、ここ十数年では最大の人気作品という。

 半年という長丁場にわたり、こうも視聴者に支持され続けたのはいったいなぜだろう? 3つの点をあげてみたい。

●その1-主人公がいないドラマ

 大胆に言えば、『あさが来た』は「主人公がいないドラマ」だった。もちろん、主人公は波瑠が演じる「白岡あさ」という設定。しかし、話題がスーパーヒロイン一人に集中するという通常のドラマ構成を発展させ、登場してくるさまざまな人一人一人が、それぞれの人生という物語を生きた。

 その意味では、「すべての人物が主人公」のドラマだった。

 あさが実業界の仕事に熱中すればするほど、その一方で、彼女を静かにしっかりとサポートする夫・新次郎の存在感が際立つ。夫が光ると、同時に、実業界で躍動する五代友厚もまた別の輝きを放った。

 明治に入り「銀行」という新しい業種に光が当たったとたん、それまでの両替商という商いを支えてきた大番頭・雁助の存在が浮き上がる。白岡家の成功と隆盛にスポットが当たれば、むしろ両替商から没落しミカン農家になった姉一家の、自然豊かな暮らしの様子が見えてくる。

 あさの活躍に目がいくと、同時に姉のはつの幸せぶりが見えてくる。お嬢様たちがきらびやかに着飾れば着飾るほど、陰で支えてきた、うめを始めとする女中たちの人生に目がいく、というように──。

 いつも誰かが、誰かの力を発揮させてあげていた。誰かは誰かによって成り立っている。このドラマは、そんな相互的な構造を持っていた。人は決して一人で立っているのではない、というつながりを見せてくれた。人気の秘密もそのあたりにあるのではないだろうか?

●その2-たくさんの「ロス」が生まれた

 正吉ロス、五代ロス、雁助ロス、よのロス、惣兵衛ロス……たくさんの登場人物が去っていくシーンが描かれた。それもまた、この朝ドラの特徴だろう。

 それぞれが深い余韻を残して消えていく。必ずしも悲しい淋しいだけではない。「いい人生だった」という肯定的な言葉や、次世代へのヒント、人生の知恵といったものを残った人に託しながら。

 一人一人の人生が深みをもって描かれていたからこそ、たくさんの離別シーンもまた必然的に現れたのだろうし、視聴者の間にロス(喪失感)の感情も生まれたのだろう。

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