『ゆとりですがなにか』は、宮藤官九郎オリジナル脚本


枝見:ゆとり世代の社会人は、会社の中で「ゆとり世代だな」と言われるそうです。その言葉には、多少の皮肉や偏見が込められています。彼らは、ただその世代に生まれただけなのに、ひとつの枠でくくられているんです。

 世代や生い立ち、性別など、不可抗力的に与えられた何かでくくられるやりきれなさを感じている人はきっとたくさんいるはず。そういう社会の理不尽さをつまみ上げてみたいと思いました。

高:実は、この企画(『お迎えデス。』)を最初に出したのは8年前なんです。そのときは、通りませんでした。私は、等身大の自分を組み込んでいくことでしかいいドラマは作れないと思っています。

 2年前、うちの父親が余命宣告を受けたんです。その時に、父にしてあげたいことがまだまだたくさんあるなって思いました。亡くなるまでの2年間、それまでできなかったことをしてもしたりなくて、後悔は尽きないけど、でも何もできずに別れなくてよかったと思いました。誰かと過ごせる当たり前の時間がとても幸せって気づいたんです。

 そうした言葉はよく言われているけど、本当に実感している人ってすごく少ないと思うんですよ。今、横にいる人や親や友達を大事にすることを後回しにするもったいなさを死者を通して生きている人に訴えたら、おもしろいと思ったんです。それをきまじめにドーンとやっちゃうと重いので、コメディータッチにしました。

 ドラマの企画発想は三者三様ながら、意外なほど個人的な思いから始まっている。だとすれば、女性プロデューサーの数だけ、女性の思いを具現化したドラマが増えたといえるだろう。櫨山さんが1994年にドラマ部門に配属になった当時と比べて女性プロデューサーは何倍にも増えた。

櫨山:私は、女性だからこそ作れるドラマがあると思っています。結婚して、子供ができて…。今日も子供の卒業式だったんですけど、昨日夜中の2時に仕事が終わってから行くわけですよ。でも式典後の謝恩会には仕事があるから出られない。子供はそこまでいてほしいのに。それに対して、私は罪の意識を感じます。お母さんの友達もあまりいないし、子供に寂しい思いをさせています。

 そうした悩みは私だけが抱えているわけではありません。共働きのご家庭で、子供を持つお母さんも私と同じような悩みを持っていると思うんです。そういう世界を目の当たりにできていることが、ドラマを作る上では大切なこと。お客さんが“そこ”にいるんです。そのお客さんに喜んでもらいながら、自分も楽しんで、ドラマを作れるのは女性ならではだと思います。

※女性セブン2016年4月21日号

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