芸能

脚本家・大石静氏 「常識や倫理の向こう側にこそ真実ある」

『コントレール ~罪と恋~』の脚本を手掛けた大石静氏

 毎週火曜に放送されていたNHKの連続ドラマ枠「ドラマ10」が、4月から毎週金曜に移動する。新生「ドラマ10」第一弾は、『セカンドバージン』などのヒットドラマを生み出した脚本家・大石静さんのオリジナル脚本による、大人のためのラブストーリー『コントレール ~罪と恋~』だ。大石さんに創作秘話や脚本のこだわりを聞いた。

――金曜10時という時間帯で、意識されることはありますか? 昔は『金曜日の妻たちへ』(TBS系)などの不倫ドラマがあって、大人枠のイメージがあります。

大石:10時枠は大人のドラマが多いのですが、『花より男子』(TBS系)もあったし、色はないと思います。これからNHKの金曜10時が、色を作っていくのでしょう。NHKでしかできない良いものを作って、できれば裏番組に勝ちたいです。

――「ドラマ10」で大石さんの脚本は、『セカンドバージン』『ガラスの家』に続いて、今回で3回目。ドラマに込めた思いを教えてください。

大石:私も年なのに、ずっとラブストーリーを発注していただけるのは、嬉しいなと思います(笑い)。しかし、今は“恋愛好き”な時代じゃないと言いますか、傷つくことを嫌って、恋をしないという人が多い気がするんです。ドラマの中で、劇的な恋愛を視聴者に体験していただきたい。

『セカンドバージン』は年の差という“かせ”を作り、『ガラスの家』は後妻というタブーを作りました。障害がないと、“なんとなくキュンとした”だけの話にしかならないので、そういう“かせ”はないかな、と今回考えついたのが、“夫を殺した男”でした。

――恋をしないという人が多いという、その社会の状況をどう思われていますか?

大石:恋愛だけじゃなくて仕事もそうですけど、何かに熱くぶつかる、身を粉にして挑戦することがなくなって、淋しいなと思います。汗水たらした後にある達成感を知らないで、傷つかないで、楽で休みの多い仕事を選ぶ。恋愛も傷つかない程度にお付き合いをする。深入りすると傷つくのが嫌だから、それ以上踏み込まない世の中は、人間が育たないと思います。

能力をぎりぎりまで、もうだめだと思うくらい努力した時に、何かを感じたりしますよね。そういう意味で恋愛だけじゃなく、若い世代の全体的な能力が下がっている気がします。

――衝撃的な事件から始まって恋愛に引き込んでいくのは、脚本的に難しかった?

大石:事件を先に描くか、2人が知り合ってから徐々に過去がわかってくるのか、どっちにするかは考えました。いつ殺人者だと気づくのか、わかったら2人は関係をあきらめられるのか。そういうサスペンスを盛り込むためには、頭に事件があったほうがいいと判断しました。

――キスシーンは早めに出てきますね。

大石:『セカンドバージン』の時は1回目にキスをして、『ガラスの家』の時は引っ張りました。すると「いつするんだ」とホームページやツイッターに怒涛の書き込みがありまして、みんな待っているんだと(笑い)。今回の、孤独なふたりが同じ空気を感じ取り、一気に惹かれ合う物語の運びは、なかなか難しかったですが、演出家がリアリティーを出してくれました。

――主演の石田ゆり子さん、井浦新さん、原田泰造さんの魅力は?

大石:石田さんは、40代の中ではトップを走るくらい、鈴木京香さんや宮沢りえさんを凌ぐくらいの色気を発していると思います。井浦さんは2回目なんですけど、何を考えているのがわからないのがいいと思います。独特というか、予測を超える、読めない芝居をしますよね。

 原田さんも、なんでお笑いをやっているのかわらないくらいの名優です(笑い)。

――大石さんは倫理が問われる2人を描くことが多いと思うのですが、その狙いは?

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン