「いただきもののカサブランカも花粉が飛ぶのは困るというので自室に飾って。それでも廊下に漂った香りが強いといって怒られるので、とにかく一日中換気扇を回すようになって。彼にとっては何気ない要求や希望だったかもしれないけど、いろいろな価値観の違いが積もっていって、私は何も言えなくなっちゃったんです。何もかも受け入れすぎてしまって…私が彼にそうさせてしまったんですよね」
◆完成された大人だからこそ埋まらない価値観のズレ
当初、夫は「仕事はどんどんしたらいいじゃない」と言っていたから結婚を決めたそうだが…。
「だんだん“あなた、講演っていったい何をしゃべるの?”“いつまで仕事するんですか?”“その大きな声でにぎやかに話してるんでしょうね”と言われるようになり、結婚前から決まっていた仕事に行く日も何度も嫌みを言われて…仕事はほぼ辞めました。彼はあくまでも私にいちばんの“援軍”であり続けてほしかったんでしょうね。今年に入ってからは細かいことで何度も叱られ、相手の顔色をうかがう生活に幾度となく泣いて友達に相談していました。もちろん、言う方の彼もイライラしてストレスがたまっていったと思います」
「五十にして天命を知る」という言葉があるように、50代ともなれば、みなそれぞれにほとんどの人がすでに価値観ができあがっている。それゆえ、10代20代のような順応性、柔軟力はもはやない。
心労から食事も喉を通らなくなり、菊田さんは8kgほどやせてしまった。
「今は少し戻りましたけど(笑い)、友達にかなり心配されて。離婚だけはしちゃダメだ、自分がいたらないからだと思っていたんですが、“そんなこと大したことないんだよ”と友達に言われて、やっと離婚を決意したんです」
「今、思うのは、私も早とちり、彼も早とちりだったんですよね。私も人生でいちばん傷つきましたし、彼もでしょうね。結納もして、高い指輪も買ったり、“同志が来る”とワクワクしていたのですから。
ふたりともいい勉強になったと思うんです。彼は“この暮らしを変えたくない”と思っているのに妻を迎えるのは違っていましたよね」
菊田さんは今回の失敗を踏まえ、熟年結婚は「趣味を通じて知り合う」「ご飯の好みや金銭感覚が合う」など価値観が近くないと難しいと実感したという。そして相手を尊重し、性格や人間性に興味を持てるかどうかも重要なポイント。
「職業やステイタスに惑わされたり、勝手に人柄を決めつけてしまうのはダメですよ」
そう自戒を込めて話す菊田さんだが、「また結婚したいですか?」とたずねると…。
「入籍は焦りませんが(笑い)、楽しくお食事したり、映画に行ったりドライブ行ったり、一緒に楽しめるパートナーは欲しいなと思います。人生は残り20年も30年もあります。ご縁があれば、ひとりよりふたり、気の合うかたと過ごすことって本当に充実していいと思うんです」
最後はいつもの朗らかな笑顔が戻って、記者も安心したのでした。
※女性セブン2016年7月21日号