夫に添い遂げる選択をする妻の心中を、直木賞作家・山本一力さんの妻・英利子さんはこう代弁する。
「夫のことを他人事にはできません。一緒に生きている人のしていることは、自分のことだと思っていますから」
山本さんは、英利子さんと結婚後、2億円もの借金を背負っている。興したビデオ制作会社を軌道に乗せることができなかったからだ。
「法的には、妻が夫の借金に対して責任を負うのは、連帯保証人や、住宅ローンの連帯債務者などになっているケースで、その他、日常家事債務という家具購入代金などの債務を除き、原則として責任を負いません」(アディーレ法律相談事務所弁護士の篠田恵里香さん)というように、法的責任には問われないはずの借金を、英利子さんはそれでも夫婦のものと受け止めた。
「生活は大変でした。今は、税金を待ってもらう必要がなくなり、公共料金を払えるようになりました。でも、それ以外は、当時とあまり変化していないんですよね。まだ借金は少し残っていますし、ふたりで一生懸命やっていく状況は続いています」
山本さんが直木賞を受賞し、人気作家になっても状況は変わらないという。
「どんな夫婦も一緒にいい思いも悪い思いもしています。いい思いが1で、悪い思いが99だとしても、1つは一緒にいい思いをしている。0はないんですよね。そう思えないと、夫婦関係も子育てもうまくいかないですから。私たちの場合、どっちが支えているというのではなく、夫婦として一緒に歩んでいるんです」
夫の不祥事に直面したとき、妻の取るべき責任、あるべき姿は夫婦の数だけ存在するのかもしれない。今回の事件は、改めて夫婦のあり方を私たちに問いかけている。
※女性セブン2016年7月28日号