長男は「何の手立てもしないのか」と主張し、のぶ代さんを病院に連れていった。結局、のぶ代さんは延命治療を施されたのち、入院先の病院で亡くなった。
「親の死という特別な場面では、家族の間でも考えが違うことがある。最も優先すべきは、本人が何を望んでいるか。生前の意思表示がない場合は、本人の最終章をどのように人間らしく終えてもらうかを家族が真剣に考えて話し合ってほしい。それが家族にとっての責任だと思います」(石飛さん)
長くつらい介護を終えた人たちが抱く思いはさまざまだ。両親を介護したファッションデザイナーの横森美奈子さん(67才)は母の逝去後、父を6年間介護した。
「ちょうど10年間の介護生活でした。私が頑張れたのは、自分が後悔したくなかったから。どんな介護をしても後悔はあるけど、あまり頑張りすぎてはダメ。完璧な介護なんてないんです」(横森さん)
両親を介護した経験を持つノンフィクション作家の久田恵さん(68才)は母を老人ホームで亡くした後、父としばらく同居していたが、その父の要介護度が4になった時、母と同じホームに父の部屋を確保し、それから3年半後に父を看取った。通算21年の介護を終えた彼女は、「自分の人生」を大切にしてほしいと強調する。
「介護をやる前はとても自分にはできないと思っていたけど、絶対にできるんです。目の前に自分の助けを必要とする人がいれば、どんなハードルも越えられる。介護は先が見えなくてつらいけれど、そこからたくさんのことを私は学び、生きる力をつけました。何があっても自分の人生を捨てないことが大切です」(久田さん)
後悔しない介護なんてない。後に悔いが残ったとしても、今やれることを無理せずやることが大切なのだ。
※女性セブン2016年8月11日号