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夏の甲子園で好投手を攻略するための意外と原始的な方法

 1流打者と1流投手の対戦はどうか。それが実現したのが、2回戦の横浜対履正社である。履正社の寺島投手は前述の通り、今大会注目の左腕である。対する横浜は神奈川大会でチーム本塁打14本、初戦でも15安打7得点と打撃好調だ。1番から9番まで長打を打てる打者が並び、左投手を苦にしない右打者が7人並ぶ。

 試合前の横浜の作戦は、寺島投手が右打者の内角に投げてくるストレートをコンパクトなスイングで引っ張る、というものだった。選手も「打席に立ってみてから対応能力を見せたい」と語った。個々の身体能力の高さがある横浜こその作戦だ。

 しかし試合は寺島投手が圧巻の投球術を見せた。右打者の外角にスライダーなどの変化球や130キロ台のストレートでカウントを整え、勝負所では140キロ超のストレートを内角に投げ込んだ。横浜打線は引っ張るはずの右打者の内角ストレートに詰まらされて、打球が力なくセカンドの前に転がる場面が幾度もあった。ヒットはわずかに6本、外野手の頭を越す打球はひとつもなかった。

「変化球のコントロールとキレが素晴らしかった。あれだけ良い変化球を投げられると、ストレート1本に絞っていてもどうしても頭に変化球が残ってしまう」(横浜・平田徹監督)

「寺島君は力の要れ所と抜き所が上手かった。内角ストレートもキレが良くて、コンパクトに引っ張ったつもりでも詰まらされました。寺島君に空間を支配された感じです」(横浜・公家響主将)

「寺島ワールド全開でした」(履正社の井町大生捕手)

 野球は投手が投げなければ始まらない。主導権は常に投手が持つ。加えて打席で打者はひとりだが、投手には捕手の相棒がいる。一方で夏の甲子園は投手の疲労が激しいので、打のチームが有利ともいう。最後に笑うのは好投手なのか、打のチームなのか。甲子園は山場を迎える。

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