“不惑の大砲”と呼ばれ歴代3位の567本塁打を誇る門田博光氏も、23年にわたる現役生活で見たフォークのなかでは、村田・野茂が印象に残ったと証言する。
「兆治のフォークは、マサカリ投法もあってタイミングの取り方が分からない。しかも、わざわざ握りを見せて、“次はフォーク”と宣言してくる。なのに打てないからこっちは堪えるわけです。落ち際を叩こうと、キャッチャーにバレないように、少しだけマウンド寄りに立ったりもしました」
その門田氏のキャリア終盤で、鳴り物入りで近鉄に入団したのが野茂だった。
「野茂からホームランを打つと公言し、老体に鞭打って朝5時半から走り込んだが、いざトルネードの投球フォームを見て思い出したのが兆治です。これはタイミングを取るのに悩まされると思ったね」
ただ、門田氏は予告通り、野茂にプロ初の被本塁打となる一発を浴びせている(1990年4月18日)。「とにかくタイミングを取るために試合中はずっと野茂のフォームを観察した」(門田氏)という。切れ味鋭い決め球が生んだ名勝負だった。
※週刊ポスト2016年9月2日号