芸能

アイドルを虚構から現実の存在にしたSMAPの革命

常に等身大を貫いたSMAPはやはり革新的

 1980年代にアイドル全盛期を迎えたものの、『ザ・ベストテン』(TBS系)や『ザ・トップテン』(日本テレビ系)などの歌謡曲番組が次々に放送終了し、1990年代前半にアイドル冬の時代が到来。昭和から平成に時代が移り変わる中で、スタートを切ったSMAPは逆風にさらされた。

 だからかもしれない。彼らはなんだってやった。1992年4月からは『夢がMORIMORI』(フジテレビ系)のレギュラーに。『おそ松くん』をパロディーにした番組内コント『音松くん』で人気に火がついた。それまでも『たのきんトリオ』などがコントに挑戦することはあったが、SMAPは私たちにとって新鮮だった。

 著書に『1989年のテレビっ子』があるライターの戸部田誠さんはSMAPとそれ以前のアイドルをこう比較する。

「アイドルがバラエティー番組に出ることは珍しいことではなかったんです。キャンディーズもピンク・レディーも、ザ・ドリフターズや萩本欽一とコントをして、さらに人気を博しましたよね。でもそれまでのアイドルにとって、バラエティーはあくまでも余技。アイドルが“下りてきて”演じていました。

 しかしSMAPは違った。芸人と同じように下積みや修業を経て、本格的にバラエティー番組や笑いに挑戦し、むしろ、ドリフを目指していたようにも見えるほど。そうしたなかで、アイドルという枠組みを飛び出し、平成を象徴するテレビタレントになりました」

 バブルが崩壊し、虚飾が次々とひっぺ返される時代にあって、それまでの飾り立てられたアイドルもまたウソっぽく見えた。そうした中で、何のてらいもなく、好きなものを好きとはっきり言うSMAPの“等身大”は一気にファンの心をつかんでいった。そしてトップアイドルとなってからも、その“等身大”はブレずに貫いた。

「王子様的な“虚構”の存在だった男性アイドルにとってタブーともいえるカッコ悪い失敗談や恋愛、下ネタトークなどをして、“現実”を持ちこみました。つまりアイドルを虚構から現実の存在にしたことで、彼らは芸能界に革命を起こした」(戸部田さん)

 SMAPの逆説的なスター性を指摘するのは、『SMAPは終わらない』の著者で批評家の矢野利裕さんだ。

「歌がうまくないのも、踊りがイマイチなのも、途中からどんどんネタにしていきましたよね。“隠して守る”ではなく〝さらけ出す”。テレビの中で縦横無尽に自由に振る舞うSMAPは、ありそうにないファンタジーを舞台の上で見せつける存在ではなく、テレビを通し身近に感じられる存在。スター性を手放したがゆえに、逆にスター性を獲得し、国民的なスターへとなっていきました」

 1995年はSMAPにとって躍進の1年となった。1994年にリリースした『がんばりましょう』から『俺たちに明日はある』まで、6曲連続でオリコン初登場1位を記録した。

 その背景には、この1995年という1年に、阪神・淡路大震災やオウム真理教による度重なる事件など、悲劇が重なったことも無関係ではないだろう。

『ジャニヲタ 女のケモノ道』の著者で女芸人の松本美香(46才)は兵庫出身。1995年1月17日早朝、とてつもない衝撃とともに目を覚まし、無我夢中で外に飛び出しなんとか身の安全を確保したという。

関連記事

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン