「強い殺菌効果がある界面活性剤が含まれた消毒液『ヂアミトール』が点滴に混入された疑いが強い。通常は0.001%~0.025%ほどに薄めて消毒などに使われるものが、高濃度のまま混入されていたようだ。亡くなった2人はともに点滴の投与後5~8時間ほどで容体が急変しているから、犯人は滴下速度を調整するなどの医療知識と技術を持っていた可能性が高い」(捜査関係者)
4階のナースステーションに残された10個前後の未使用の点滴には、保護フィルムに皮下注射用の細い注射針で刺したと見られるごく小さな穴が開いており、「内部の人間による犯行の可能性が極めて高い」(前出・捜査関係者)とみられている。
高橋洋一院長は会見で「犯人はわからない」とする一方で、「勤務している若い人の心情がよくわからないことがある」ともコメントした。
ヒガノクリニック院長で精神科医の日向野春総氏はこう推測する。
「犯人は入院患者を無差別に殺害しようとした可能性が高い。ターゲットは患者というよりは病院全体で、病院や経営者の信用を失墜させ、ダメージを与えることが目的だったのでは。病院での待遇や人間関係への不満がその背景にあると考えられます」
思い起こされるのが、2000年10月に宮城・仙台市の北陵クリニックで起きた点滴による殺人未遂事件だ。
准看護師の男性(当時29才)が小学6年生の女児に筋弛緩剤を点滴し、殺害しようとした事件で、他にも男性の勤務時間には高齢者を中心に10人が死亡し、2000年9月には5才男児も亡くなっていた。男性は日頃から病院での待遇などに対する不満を漏らしていたという。
入院患者は自らの手で点滴をすることはできないから、病院スタッフを信頼し、身を任せるほかはない。「病院への不満」の捌け口として、患者が抵抗する術もなく殺されてしまうとは、あまりにも恐ろしく、あまりにも理不尽だ。
※女性セブン2016年10月20日号