通常、知事の報酬は外部委員からなる「特別職報酬等審議会」を設置し、そこでの議論を経て決められる。ただし、小池知事はこの慣例にとらわれず、自ら議会に条例案を提出して削減を決めた。
小池知事と同じく、名古屋市長就任後に2750万円だった市長の報酬を800万円に減額し、退職金をゼロにした河村市長が言う。
「知事がやろうと思えばできるんです。給料が高いと、保身のために今の地位を守ろうと汲々として、知事が家業のようになってしまう。世界で知事や市長の給料が市民よりはるかに高いのは日本だけで、知事の給料は現在の半額でいい。給料が安ければ市民のために働こうという人間以外には、魅力がなくなる。代々の家業としても成り立ちません」
だが一方、専門家からも知事の報酬削減に疑問を投げかける声がある。政治と金の問題に詳しい神戸学院大学教授の上脇博之さんは、知事の給料を削減した自治体が多かったのは、「税収不足による財政難の影響」としたうえでこう指摘する。
「給料を下げるのが良いとは一概に言えません。大切なのは、なぜ下げるのかという理由であり、『公約だから』では単なる人気取りと取られかねない。小池知事の影響で全国の知事や議員の報酬が“値下げ競争”になると、『この程度の給料だから一生懸命に仕事をしなくていいや』という不届き者が登場するかもしれません」
数は決して多くないが、報酬を「削減すべきでない」と回答した知事からは、次のような意見が寄せられた。
「第三者機関である特別職報酬等審議会の意見を踏まえ、条例により定めている額であり、適正と考えているため」(神奈川県・黒岩祐治知事)
「報酬に見合った仕事をしっかりとさせていただいている」(福岡県・小川洋知事)
その小川知事には“第二の舛添問題”と報じられる疑惑が浮上。検査入院を理由に公務をドタキャンし、病院名を誰にも告げていないことから入院そのものを疑う声が出ているが、小川知事は10月28日、会見を開き、「病院でもらった資料がある。信じてほしい」などと繰り返した。
今後、議会などによる調査が待たれるが、その「報酬に見合った仕事」をしているかどうかの評価を下すことこそ、私たち有権者の責任といえる。
※女性セブン2016年11月17日号