麻生太郎・副総理兼財務相や菅官房長官、二階俊博・幹事長ら党幹部でさえも、今井氏の存在を無視できない。そのことを示したのが、5月の伊勢志摩サミットの首脳会議に提出された「今井ペーパー」事件だ。
安倍首相は7月の参院選を前に消費増税の再延期を考えていたが、前回の増税延期の際、「リーマンショックのような事態が発生しない限り増税を実施する」と断言した手前、口実を見出せなかった。麻生財務相や自民党執行部も再延期に強硬に反対していた。
そこで今井氏は国際舞台で“大芝居”を打つ。サミットで「世界経済の指標がリーマンショック前に似ている」と分析した資料を配布し、各国首脳から疑問の声があがる中、安倍首相はそれを理由に党内の反対を押し切って消費増税の再延期を決定したのである。
資料は今井氏ら経産省側がまとめたことから「今井ペーパー」と呼ばれ、直前に見せられた麻生財務相は異論があったものの、覆すことはできなかった。官邸詰めのベテラン政治部記者が語る。
「各省から派遣されている事務秘書官は担当する課題を今井氏に報告し、総理には今井氏が報告する。総理の日程も秘書官室がすべて管理しているから、大臣でさえ今井さんを通さないと総理とサシで会えない。いまや大臣、自民党幹部まで総理に相談する前に、“今井秘書官はどう考えているのか”と顔色をうかがうようになった」
※週刊ポスト2016年11月18日号