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息子を残すのは無念だと泣きながら夫が死んだ女性の告白手記

夫の死を機に不幸を背負った女性の告白手記(写真/アフロ)

 どんなに不幸なことがあっても、どんなに辛いことがあっても「私は負けない」。一般のかたから寄せられた手記を、原文にできる限り忠実に再現いたしました。夫の死をきっかけにモンスター息子が襲いかかってきた、吉岡清子(仮名、栃木県・62才)の場合──。

 * * *

 14年前の夏、夫は3か月の闘病の末、あっけなく亡くなりました。享年55。手の施しようのない末期がんでした。

 大手の電気工事会社の下請け会社を経営し、昼は「鬼の親方」と恐れられても、家に帰れば明るい酒飲み。毎晩、酔い潰れるまで飲んでも、翌朝はケロっとして起きてくる。それが結婚してから30年近く。私は夫は不死身だとどこかで思っていたのだと思います。

 慌ただしく夫の葬儀を終えると、後悔と自己嫌悪が押し寄せました。医者嫌いで10年以上、健康診断をしていなかった夫を、首に縄をつけてでも引っ張って行けばよかった。泣くに泣けず、声を出そうにものどが締めつけられて声にならない。

 まさか、この悲しみが私から家も財産も、生きる気力すら奪う苦労の着火剤となるとは、あの時の私は思いもよりませんでした。

◆息子が高2の夏に自主退学してしまった

 事の始まりは、いったいどこから話せばいいのでしょう。学校の勉強についていけず、団体行動も苦手だった長男が、とうとう高2の夏に自主退学してしまいました。

 それまでせめて高卒の学歴をつけさせようと、私は本人をなだめすかし、「特別支援学校」をチラつかせる小学校の先生には、床に頭をこすりつけて学校に留まらせてもらったあげくです。

 がっかりを通り越して、錯乱状態で、「勝手なことして…そんなことするなら、この家から出て行け。うちの子でもなんでもない」と、口が勝手に動きました。

 そのときの私の一語一句が、後々、長男の口から刃物となって飛び出し、わが身を切り裂くのですが、それはもう少し後のこと。

「とにかく落ち着け」と、夫が私と息子の間に割って入り、「おれの下で、事務として働け」と引き受けてくれました。

 それから数日後。夫が息子の首根っこをつかんで、「ふざけんな」と壁に打ちつけたんです。何でも、夫が出張している間に、会社の従業員に、「コーラ買ってこいよ」と命令し、「手が離せない」と断られると、「おれは社長の息子だぞ。いうことがきけないなら、クビだ」と言ったとか。

「どういうつもりだ」と、夫が怒ると、息子は「ごめんなさい、ごめんなさい」とそればかり。それでもまだ夫の怒りが収まらないとみると、泣き出して話になりません。

 威張れる相手には、とことん。でも自分より力が強いとみると、従順なふりをする。子供の頃から、何度も見てきた息子の姿です。

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