芸能

松方弘樹さんが生前語っていた消えゆく時代劇への思い

時代劇への思いは人一倍だった

 松方弘樹(享年74)といえばさまざまな「ヤンチャ伝説」で知られる「豪快な映画スター」というのが、多くの方のイメージかもしれない。だが、その役者人生は決して平坦ではなかった。時代劇研究家の春日太一氏が、本人へのインタビューを追いながら、その波乱万丈な道のりを振り返った。

 * * *
 そもそも、松方は剣豪スター・近衛十四郎を父にもつものの、役者ではなく歌手を志望していた。

「高校二年生の時にウチの父親と東映の契約更改の時に『学生服を着てお前も来い』と言われてね。それで行ったら東映の大川博社長が『君、映画に出ないか』っていうことになって。ようは社長に会わすために僕を呼んだわけです。父親と母親には『歌を歌うにしても感情表現が必要だから、映画を一本ぐらいやっておいてもいいんじゃないか』って。詭弁なんですけど。

 そんないきさつだから映画を続けるつもりはありませんでした。でも、歌手になりたくても、なかなか方向転換が上手くいかないの。というのも、当時は東映と第二東映というのがあって、それで週に二本ずつ映画を撮らないといけない。月に十六本ですよ。そうすると、それだけ主役が要るわけですよ。しかも、それ以前に波多伸二さんという俳優がいらして、主役もしていたのですが、単車の事故で亡くなってしまったんです。

 第二東映には高倉健さん、水木襄さん、梅宮辰夫さん、千葉真一さんがいて、健さんが美空ひばりさんの相手役として少しランクアップすることになったので、『もっと若手を』ということで僕が入った。補欠の補欠みたいなもんでしたが、それでも主役をやらせてもらってね。それで次から次へ作品が来ているうちに歌と疎遠になってしまったんです」

 その後、松方は東映京都撮影所の専属俳優となり、同じく二世としてデビューした北大路欣也とのコンビで時代劇のホープとして売り出される。が、折り悪く、その時期は時代劇映画に全く客が入らなくなっていた。

「正月作品で時代劇の鬘を被ったんです。そしたら似合うというので、十八歳の時に太秦に引っ張りこまれました。当時は欣也と二人で売り出されました。あいつは『東映のプリンス』、僕は『東映の暴れん坊』ということでね。でも客は全く入らなかった。

 当時は台本を覚えるので精一杯でした。五冊くらい抱えているわけだから。顔は同じままで衣装の鬘だけ変えて朝昼晩と一日三班、違う現場を回りました。ですから芝居の勉強というより即実践でした。その代わり現場で下手を打ってばかりいて、僕だけ最後までよく残されていましたよ」

関連記事

トピックス

NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
雅子さまが三重県をご訪問(共同通信社)
《お洒落とは》フェラガモ歴30年の雅子さま、三重県ご訪問でお持ちの愛用バッグに込められた“美学” 愛子さまにも受け継がれる「サステナブルの心」
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン