2つ目の理由は、録画されやすいコンテンツであること。視聴者の多くは坂元裕二さんのつむぐセリフの面白さに期待していて、それを「聞き逃したくない」「繰り返し聞きたい」ため、リアルタイム視聴ではなく、録画視聴を選ぶ傾向が強いのです。
「唐揚げ洗える? レモンするってことは不可逆なんだよ。二度とは戻れない」「ふだんは僕がノーパンなのか、アリパンなのか認識してないでしょ?」「告白は子どもがすることですよ。大人は誘惑してください」「泣きながらご飯食べたことがある人は生きていけます」などの練られたセリフは、落ち着いて見られる日時を選んでじっくり楽しみたいもの。録画視聴が増えるのは、作品に対する愛着と信頼に他なりません。
もともと坂元裕二さんの作品は、『Mother』『Woman』(日本テレビ系)、『最高の離婚』『問題のあるレストラン』『いつかこの恋を思い出してきっと泣いてしまう』(フジテレビ系)など、視聴率は1桁から良くても10%前半。「サクッと見られて視聴率が高い」作品ではなく、「録画してじっくり見たいから視聴率が下がる」作品であり、数字よりも心に刺さる深さで支持を集めてきました。
また、昨年から火曜22時は録画視聴の傾向が強いドラマ枠。実際、前期の『逃げ恥』もフィーバー前の初回から、視聴率10.2%をタイムシフト(録画)視聴率10.6%が上回る異例の事態が起きていました。各局のテレビマンたちは密かに驚き、のちの大ヒットを予想する声が密かに上がっていたのです。
◇SNSをフル活用した「逃げ恥」とのPR戦略の違い