国内

釜本邦茂氏「『陛下は東京に長い出張中』が京都人の感覚」

京都出身の釜本氏はどう考える?

「2019年1月1日に皇太子が新天皇に即位」──政府の検討が進み、今上天皇の生前退位が現実のシナリオになりつつある。それを受け、「退位後は京都にお戻りいただこう」という提案が持ち上がっている。

 天皇が自らの退位後の居所について言及したことはないが、象徴天皇のあり方を模索してきた今上天皇だからこそ、「伝統文化の京都がよい」と宮中祭祀に詳しい国際日本文化研究センターの山折哲雄・名誉教授はいう。

「戦前への反省から学ぶことに大変苦労されてきた陛下は、皇太子時代の1981年、平安時代の嵯峨天皇(9世紀)に象徴される“文化天皇”こそが戦後の象徴天皇のあり方だろうと発言されたこともありました。重責から解放されるわけですから、今度は皇室の文化の“ふるさと”をゆっくり味わっていただきたい」

 さらに山折氏は「皇室に対する国民の感覚も変わってくる」と続ける。

「現在の皇居は周囲に深いお濠があり、敷地は森に覆われている。自然と国民が天皇を仰ぎ見るかたちになり、どうしても一神教的な趣があります。

 これに対し京都御所にはお濠はなく、本願寺など多数の仏閣や、安倍晴明の墓のような道教の史跡も近辺にあり、多神教的な空間になっている。庶民の生活の場とも“地続き”です。だからこそ京都人は長く、親しみを込めて『天皇さん、天皇さん』と呼んできました。警備が厳重になったのは、東京に移ってからです」

 そうした国民との距離感は、皇室にとっても大切な意味を持つという。昭和天皇の弟・高松宮宣仁親王は生前、こう述べたという。

〈皇族というのは国民に守ってもらっているんだから過剰な警備なんかいらない。大々的に警護しなければならないような皇室なら何百年も前に滅んでいるよ〉(『文藝春秋』1998年8月号、喜久子宣仁親王妃の証言)

 京都人からも、この構想には賛同の声が強い。京都市右京区で生まれ育ち、京都府立山城高校時代に輝かしい実績を残した日本サッカー協会元副会長・釜本邦茂氏はこういう。

「昔、京都出身の大先輩方に聞いた話では、明治天皇が江戸に出発する際に『ちょっと行ってきますわ』とおっしゃったというんです。関西弁だったかはわかりませんが、そういう逸話が地元に広がるくらいですから、“天皇陛下は今、東京へのちょっと長い出張中”というのが京都の人たちの感覚です。首都・東京の歴史はたかだか150年、京の都は1000年の歴史がある。戻ってきていただければ、とても嬉しいことです」

 天皇が行幸先から帰ることは「還幸」と表現される。“150年間の江戸行幸”からの還幸で、新時代の皇室像が描かれていくのか。

※週刊ポスト2017年3月3日号

関連記事

トピックス

令和最強のグラビア女王・えなこ
令和最強のグラビア女王・えなこ 「表紙掲載」と「次の目標」への思いを語る
NEWSポストセブン
“地中海の楽園”マルタで公務員がコカインを使用していたことが発覚した(右の写真はサンプルです)
公務員のコカイン動画が大炎上…ワーホリ解禁の“地中海の楽園”マルタで蔓延する「ドラッグ地獄」の実態「ハードドラッグも規制がゆるい」
NEWSポストセブン
強制送還のためニノイ・アキノ国際空港に移送された渡辺優樹、小島智信両容疑者を乗せて飛行機の下に向かう車両(2023年撮影、時事通信フォト)
【ルフィの一味は実は反目し合っていた】広域強盗事件の裁判で明かされた「本当の関係」 日本の実行役に報酬を支払わなかったとのエピソードも
NEWSポストセブン
『週刊ポスト』8月4日発売号で撮り下ろしグラビアに挑戦
渡邊渚さん、撮り下ろしグラビアに挑戦「撮られることにも慣れてきたような気がします」、今後は執筆業に注力「この夏は色んなことを体験して、これから書く文章にも活かしたいです」
週刊ポスト
イセ食品グループ創業者で元会長の伊勢彦信氏
《小室圭さんに私の裁判弁護を依頼します》眞子さんの“後見人”イセ食品元会長が告白、夫妻のアパートで食事した際に気になった「夫としての資質」
週刊ポスト
ブラジルの元バスケットボール選手が殺人未遂の疑いで逮捕された(SNSより、左は削除済み)
《35秒で61回殴打》ブラジル・元プロバスケ選手がエレベーターで恋人女性を絶え間なく殴り続け、顔面変形の大ケガを負わせる【防犯カメラが捉えた一部始終】
NEWSポストセブン
連続強盗の指示役とみられる今村磨人(左)、藤田聖也(右)両容疑者。移送前、フィリピン・マニラ首都圏のビクタン収容所[フィリピン法務省提供](AFP=時事)
《ルフィ事件》「腕を切り落とせ」恐怖の制裁証言も…「藤田は今村のビジネスを全部奪おうとしていた」「小島は組織のナンバー2だった」指示役らの裁判での“攻防戦”
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月12日、撮影/横田紋子)
《麗しのロイヤルブルー》雅子さま、ファッションで示した現地への“敬意” 専門家が絶賛「ロイヤルファミリーとしての矜持を感じた」【軍地彩弓のファッションNEWS】
NEWSポストセブン
ツアーに本格復帰しているものの…(左から小林夢果、川崎春花、阿部未悠/時事通信フォト)
《トリプルボギー不倫》川崎春花、小林夢果、阿部未悠のプロ3人にゴルフの成績で “明暗” 「禊を済ませた川崎が苦戦しているのに…」の声も
週刊ポスト
三原じゅん子氏に浮上した暴力団関係者との交遊疑惑(写真/共同通信社)
《党内からも退陣要求噴出》窮地の石破首相が恐れる閣僚スキャンダル 三原じゅん子・こども政策担当相に暴力団関係者との“交遊疑惑”発覚
週刊ポスト
兄・輝星と仕草も容貌も瓜二つの吉田大輝
金足農業・吉田大輝「甲子園で優勝して、兄・輝星を超えたい」決意 顔も仕草も瓜二つだが、「まるで違う」と父が明かす2人の性格
週刊ポスト
山本アナは2016年にTBSに入局。現在は『報道特集』のメインキャスターを務める(TBSホームページより)
【「報道特集」での発言を直撃取材】TBS山本恵里伽アナが見せた“異変” 記者の間では「神対応の人」と話題
NEWSポストセブン