予算案が衆院を通過した2月27日、安倍首相は、東京・赤坂の中華料理店で官邸キャップとの懇親会を行なった。その日、経産省は、【1】庁舎内のすべての局の部屋を勤務時間中もロックして記者の出入りを禁止し、【2】職員が取材を受ける際は応接室で他の職員を同席させ、【3】取材内容を広報室に報告させる──という“記者排除令”を出した。日米首脳会談前に交渉内容の一部が漏洩し、世耕弘成・経産相が安倍首相訪米の同行者から外された“腹いせ”が原因とされる。

 これまで記者クラブ制度の下、特権的に役所からの情報を得てきた大手メディアの記者たちにとって、この措置は死活問題だ。

「同じ動きが全省庁に広がれば記者は情報が取れなくなって食いっぱぐれる。世耕大臣がやったことはトランプ政権の報道官が気に入らない記者を会見から閉め出したことよりもおかしい」(財務省担当記者)

 批判と不満は大メディアの記者全体で高まっている。

 クラブ制度の特権を奪われ、記者たちはようやく政権による情報統制に愕然としたのだろうか。新聞記者からリークされた赤坂での首相と記者の懇談をベストセラー・『日本会議の研究』著者である菅野完(たもつ)氏がツイッターで流し話題を呼んだが、そのリーク元は菅野氏の知人の大手新聞記者なのだという。これは、大手メディアの記者がいまやネットで国民に直接情報を流すしか“真相”を伝える手段を持っていないことに気づいた証拠にも見える。菅野氏はいう。

「新聞が反権力で動かないのはみっともない状況。現場の記者まで、『政権批判ありきで記事をつくるのはどうか』と平気でいう。新聞社内に反権力はダサイと考えるカルチャーができてしまった。だから本当に報じたいことも、ネットで書いてくれと他人任せにする」

 新聞記者たちは、安倍批判記事もネットへのリークではなく堂々と署名で書いてみせたらどうなのか。

※週刊ポスト2017年3月17日号

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