ライフ

テレ朝「きりたんぽ事件」を見て「抗議のスキル」を考えた

きりたんぽに罪はない(写真:アフロ)

 テレビ朝日で放映予定だったドラマのタイトルが秋田県の抗議で変更になった。一方、かつて村上春樹氏の小説の一部を抗議した自治体は炎上したこともある。両者の違いはなにか。大人力コラムニストの石原壮一郎氏が「大人の抗議力」を考える。

 * * *
 最初に「秋田県抗議でテレ朝がタイトル変更」というニュースを見たときは、「ああ、どうせまたしょうもないイチャモンを……」と思っていたんですが、そうではありませんでした。早とちりして申し訳ありません。よく読むと「なるほど、それは怒るのはもっともだ」という話でした。

 テレビ朝日が4月から「サヨナラ、きりたんぽ」というタイトルの連続ドラマを放送することを発表。ところが、この「きりたんぽ」は、あの秋田の郷土料理のことではありませんでした。ドラマは、主人公の女性が自分を裏切った男性の局部を切断するなどして成敗するストーリー。「きりたんぽ」をタイトルにつけたのは、切った男性器をイメージさせることを狙ってのことのようです。

 報道によると、ドラマの内容が発表されてから、秋田県庁やきりたんぽと縁が深い鹿角市、大館市、北秋田市の市役所に「下品で不快」などの声がたくさん寄せられたとか。3月7日、県からテレビ朝日に「郷土料理のイメージダウンにつながる」と口頭で抗議したところ、同日中に「タイトルを変更する」という連絡があったそうです。

 ほどなくホームページも修正され、現在は「連続ドラマ タイトル未定」となっていて、説明文の中にあった「阿部定」の文字も削除されました。ちなみに、ドラマの企画・原作は秋元康氏。男性の局部を切断する(?)主人公を演じるのは「AKB48」の渡辺麻友さん。まゆゆこと渡辺さんも、当初は「私が平成の阿部定!? いままで演じたことのない役柄です! 私自身も大きな挑戦となります」とノリノリでコメントしていました。

 秋田県民やきりたんぽ関係者としたら、そりゃ、こんなタイトルはつけてほしくないでしょう。ソウルフードであるきりたんぽを完全に冒涜しているし、これから先、きりたんぽを食べるたびに妙な連想をしてしまいそうです。「きりたんぽ=きり○んぽ」のイメージが全国に広がったら、事あるごとにネタにされたり、AVのひとつも登場したりして、地元やきりたんぽ業界のダメージは計り知れません。

 テレビ朝日側の対応の迅速さや秋元康氏という希代の策士(ホメ言葉です)がからんでいることから、もしかしたら最初からこういう展開を狙っていたのではという疑念もふつふつと湧いてきますが、それはさておき、この場合は抗議するのはもっともだし憤りもよくわかります。勝手に正義の味方面や被害者面をして「差別だ!」「不謹慎だ!」「女性蔑視よ!」といきり立つのとは、必然性も説得力も込められた思いの深さも違います。

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン