ライフ

近大が4年連続志願者日本一 「マグロ」だけじゃない躍動力

2012年より近大学長を務める塩崎均氏(写真/五感生活研究所)

 今年も日本で最も多くの志願者を集めたのは近畿大学だった。長年代名詞とされてきたマグロのみならず、このところの研究成果は実に多岐に渡り、またその内容の斬新さも際立っている。『なぜ関西のローカル大学「近大」が、志願者数日本一になったのか』の著者で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
「本屋に行くとトイレが近くなる」という都市伝説がある。その現象について本気で科学的研究を重ね、「もよおす成分」を発見し、「本屋の香りスプレー」という商品にしてしまったことを伝える経済ニュースに、一瞬耳を疑った。

「香りと便意」との関係性。そこに着目した「本屋の香りスプレー」は、ぷっと吹き出してしまう、ひねりが効いた新商品。そもそも、こんなニッチな研究に大まじめに取り組んでいる研究者っていったいどんな人だろう?

 肩書きを聞き……そうか、やっぱりあの大学の先生だったかと納得。

 近畿大学工学部化学生命工学科・野村正人教授は、天然精油の香り成分を研究しヒトや動植物や昆虫等と香りとの関係を探索してきた研究者。化粧品や医薬品などの化学工業材料として活用する方法を探っている。

 その野村教授が本屋・図書館を訪問して香りを収集し、インクの香りなど数百種を分析して、もよおす成分をつきとめた成果だった。「便秘気味の人に使っていただきたい」という。

 いや、それだけではない。近大は「笑い」そのものの研究を始めたと発表した。吉本興業等とタッグを組み、「笑い」を医学的に検証し身体やメンタルヘルスに与える効果を解明するプロジェクトだという。うつ病など精神疾患の治療や健常者のストレスマネジメントに活かす方策を探るのだとか。

 と、次々にオモロイ大学研究の情報を発信する近大。

 ポイントは、それがただのアイキャッチに終わらず、背後に「なるほど」と納得させられるような研究成果や意義づけがあること。

 クスっともれる笑いの向こう側に、研究の積み重ねや客観的な裏付け、社会的意義が横たわっている。だからこそ、聞いた人の記憶に刻まれるのだろう。

 こうした研究成果や情報発信も一助となってか、近大の志願者数は日本一、トップを走ってきた。そして今年の入試結果が3月10日に判明。志願者数はさらに伸びて昨年度より2万6981人増え、14万6896人となり「4年連続日本一」が確定したという。

 では、圧倒的な人気を集めるその近大の「学長」とは、いったいどんな人なのだろう? 近大といえば卒業生・つんく♂の顔がすぐ浮かぶけれど、学長とは……?

 2012年より近大学長を務める塩﨑均氏の新刊『近大学長「常識破りの大学解体新書」』(中公新書ラクレ)を開いてみると……。

 自ら胃がんになり、ステージ4という深刻な病状から生還してきた経験から本書は始まっている。近大付属病院病院長で消化器の専門医だった自分が、まさか胃がんに罹患するとは。数奇な運命に戸惑い、しかし自分自身の主治医として身体に向き合うことを決め、さまざまな治療法を試してきた。

 そうしたシビアながん経験で実感したのが、「命の眩しさ」。それが大学を運営する土台となっている、と語る口調はしごく静かで抑制的だ。

「大学時代は、人生の中でも、最も眩しい時期です……偏差値以外の物差しを取り戻し、学生たちに眩しいばかりにいきいきとした毎日を送って欲しいと思い、筆をとりました」(本書10頁)。

関連記事

トピックス

防犯カメラが捉えた緊迫の一幕とは──
《浜松・ガールズバー店員2人刺殺》「『お父さん、すみません』と泣いて土下座して…」被害者・竹内朋香さんの夫が振り返る“両手ナイフ男”の凶行からの壮絶な半年間
NEWSポストセブン
リモートワークや打合せに使われることもあるカラオケボックス(写真提供/イメージマート)
《警視庁記者クラブの記者がカラオケボックスで乱痴気騒ぎ》個室内で「行為」に及ぶ人たちの実態 従業員の嘆き「珍しくない話」「注意に行くことになってるけど、仕事とはいえ嫌。逆ギレされることもある」 
NEWSポストセブン
「最長片道切符の旅」を達成した伊藤桃さん
「西国分寺から立川…2駅の移動に7時間半」11000kmを“一筆書き”した鉄旅タレント・伊藤桃が語る「過酷すぎるルート」と「撮り鉄」への本音
NEWSポストセブン
ドジャース・山本由伸投手(TikTokより)
《好みのタイプは年上モデル》ドジャース・山本由伸の多忙なオフに…Nikiとの関係は終了も現在も続く“友人関係”
NEWSポストセブン
齋藤元彦・兵庫県知事と、名誉毀損罪で起訴された「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志被告(時事通信フォト)
NHK党・立花孝志被告「相次ぐ刑事告訴」でもまだまだ“信奉者”がいるのはなぜ…? 「この世の闇を照らしてくれる」との声も
NEWSポストセブン
ライブ配信アプリ「ふわっち」のライバー・“最上あい”こと佐藤愛里さん(Xより)、高野健一容疑者の卒アル写真
《高田馬場・女性ライバー刺殺》「僕も殺されるんじゃないかと…」最上あいさんの元婚約者が死を乗り越え“山手線1周配信”…推し活で横行する「闇投げ銭」に警鐘
NEWSポストセブン
伊勢ヶ濱親方と白鵬氏
旧宮城野部屋力士の一斉改名で角界に波紋 白鵬氏の「鵬」が弟子たちの四股名から消え、「部屋再興がなくなった」「再興できても炎鵬がゼロからのスタートか」の声
NEWSポストセブン
環境活動家のグレタ・トゥンベリさん(22)
《不敵な笑みでテロ組織のデモに参加》“環境少女グレタ・トゥンベリさん”の過激化が止まらずイギリスで逮捕「イスラエルに拿捕され、ギリシャに強制送還されたことも」
NEWSポストセブン
親子4人死亡の3日後、”5人目の遺体”が別のマンションで発見された
《中堅ゼネコン勤務の“27歳交際相手”は牛刀で刺殺》「赤い軽自動車で出かけていた」親子4人死亡事件の母親がみせていた“不可解な行動” 「長男と口元がそっくりの美人なお母さん」
NEWSポストセブン
荒川静香さん以来、約20年ぶりの金メダルを目指す坂本花織選手(写真/AFLO)
《2026年大予測》ミラノ・コルティナ五輪のフィギュアスケート 坂本花織選手、“りくりゅう”ペアなど日本の「メダル連発」に期待 浅田真央の動向にも注目
女性セブン
トランプ大統領もエスプタイン元被告との過去に親交があった1人(民主党より)
《電マ、ナースセットなど用途不明のグッズの数々》数千枚の写真が公開…10代女性らが被害に遭った“悪魔の館”で発見された数々の物品【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《ハワイで白黒ペアルック》「大谷翔平さんですか?」に真美子さんは“余裕の対応”…ファンが投稿した「ファミリーの仲睦まじい姿」
NEWSポストセブン