本書では近大の「学術研究と社会とのつながり」を中心軸にしつつ、近大マグロを生み出した水産研究所、養殖技術研究と商品化力、近大マンゴーなどその他の分野でも進む新商品開発、石炭に代わる環境エネルギー技術・バイオコークス、東日本大震災復興支援、ベルリッツと提携して立ち上げた国際学部……と、具体的な「実学」への取り組みが紹介されていく。
近大躍進のヒントも詰まっている。例えば、「稼ぐ大学の秘訣を明かします」という章では14の秘訣が語られている。「パートナーに中小も大手もない」「先駆けになることを厭わない」「徹底的に遊びにこだわる」「すべてのステークホルダーをつかめ」……と、大学の立ち位置が明快に伝わってくる。
いよいよ来年から「2018年問題」に直面せざるをえない日本。18歳人口が2018年から減っていく新たな局面に突入する教育界。志願者を一人でも増やそうと、各大学こぞって自校の魅力を発信している。そうしなければ生き残れない危機の中にあって、しかし塩﨑学長の言葉は、意外なほど平穏、ストレートでてらいが無い。
ド派手入学式やインパクトの強い新聞広告、「近大マグロ」に始まる切れ目の無い話題性で世の関心を惹き続けている大学のイメージとは、良い意味でかけ離れている。そこにむしろ、この大学が持つ奥行き感と振り幅、躍動力を感じる。落差の中に、次の新たな可能性が潜んでいそうだ。
近大では今、2020年完成に向けて「超近大プロジェクト」が進行中。世間をあっと言わせる仕掛けがきっと用意されているはず。関心は尽きない。