◆“非合理的”だと切り捨てない
宗教的な観点のみならず、科学的にも霊体験は完全には否定されていない。諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授は、脳科学者の立場から解説する。
「人間が目や耳などから受け取る情報は膨大なので、脳内で情報の取捨選択や加工処理が行なわれます。つまり、“何かが見えるか見えないか”の境界はその対象が目の前にあるか否か、ではなく、最終的に脳の視覚を司る部分が反応するかしないかで決まります。
目を閉じて誰かの顔を思い浮かべるのが可能なのと同じように、実際にはいないはずの人が目の前にいるように見えるということも起こり得ます。夢を見るのも同様で、“目に見えないものを見る”ということ自体は、脳科学的にはそう不思議なことではないのです」
『死別の悲しみに向き合う』などの著者で、グリーフケア(※)を研究する関西学院大学人間福祉学部教授の坂口幸弘氏はこう話す。
【※グリーフケア:大切な人との死別を経験し、悲しみに暮れる人を包括的に支援すること】
「死別に対する自然な反応のひとつとして、霊的なものを見たり感じたりすることはある。近親者の死を受け入れるプロセスにおいても、大切なものかもしれません」