そもそも私は宝塚にいたから、自分でメイクをするのが普通だった。宝塚にはメイクさんは1人もいない。髪の毛も全て自分だ。美容院や、カツラ専門店でのカツラのレンタルはあるものの、楽屋内は基本自分で何でもする。女役になると各場面のショーの髪形やロココ調のマリー・アントワネットの髪形だって自分でああでもないこうでもないと奮闘する。とにかく、逞しい劇団であることは間違いない。
入ったばかりのころは上級生のブロマイドを食い入るように見て研究した。特に自分と似た顔立ちのかたがいればラッキーとばかりにメイクを真似たものだ。劇場が大きいので、普通のメイクではノーメイクに見える。なので宝塚メイクは誇張した化粧技術が必要なのだ。
しかし濃い舞台化粧は時に、普段のメイクが物足りない感じになってくるのが困りものでもあった。感覚がブレるのだ。アイラインの幅ってどのくらい? 眉の濃さってどうだっけ!?となり、私服なのに今思えばドラキュラ伯爵みたいなメイクで街を歩いていた記憶も…われながら怖い。
今は逆にマイナス化粧。メイクアップならぬメイクダウン? いや違う…ハーフメイク!を目指している。自前のパーツの強さを色でぼかして柔らかくしていくイメージだ。中により気味な顔のパーツを外へ外へ外へ…。
口紅も発色よい明るい色は避け、グロスもあまり使わない。私のようなハッキリした顔立ちにグロスは、唐揚げを見事平らげた人のように見えるのだ。だから、できるだけ自然な色を優しくのせる程度。
そんなこんなでやっと、人様に威圧感を与えない、テレビに映ったときにちょうどいい塩梅の顔になるのです。女性って、なかなか大変(私って…かな)。
でもだからこそ飽きずに楽しい。そして、やはり自分を知ること。半世紀生きてきてようやく私も、自分の取扱説明書を手にした気が最近している。春本番。さぁ、あなたはどんな自分で参りますか?
撮影/渡辺達生
※女性セブン2017年5月4日号