2010年の理事選で、そうした一門支配に正面から挑んだのが、貴乃花親方だった。二所ノ関一門を割って出馬し、新たに貴乃花一門を立ち上げた。当時は「貴の乱」などと騒がれた。
「理事を一人出すには最低9票が必要といわれます。現在、貴乃花一門に所属する親方は9人。執行部(理事会)では少数派に甘んじるしかなく、貴乃花親方の理事長への道はまだ遠いとみられていた。ただし、一門を超えた広い支持があるとなると、話は変わってきます」(前出の相撲記者)
昨年3月の理事長選で敗北した後の勢力拡大は、様々な「冠婚葬祭」の席での様子からも読み取れる。
昨年10月2日、川崎大師平間寺では故・北の湖理事長の一周忌法要が執り行なわれた。
「集まった18人の親方衆の顔ぶれは、玉ノ井(元大関・栃東、40)ら貴乃花グループとされる親方ばかり。八角理事長をはじめ協会幹部の姿はなく、“北の湖理事長の遺志を継げるのは貴乃花親方しかいない”という声まであがっていました」(前出の後援会関係者)
また、今年2月には幕内昇進を決めた出羽海一門・木瀬部屋の十両・徳勝龍が都内で挙式。本来は顔を揃えるはずの出羽一門の親方衆の姿はほとんど見えず、ここでも貴乃花親方を中心とした若手親方グループが集まっていた。
「新横綱・稀勢の里が姿を見せて話題になった披露宴でしたが、関係者は貴乃花グループの“出席率”に興味津々でした。結婚披露宴は断髪式と並んで、力士にとっての一大イベントであり、大口のタニマチを呼んで祝儀を集める場です。それだけに、一門の親方が集まり、謝意を示すのが常識でした。一門体制崩壊の萌芽が確かに感じられた。隠れシンパも含めれば、貴乃花グループはすでに親方衆の過半数に迫るという説まであります」(同前)