それでも、首相の選挙公約で自民党の第2次憲法草案(2012年の日本国憲法草案)にも盛り込まれている「戦力不所持」(9条の2)の廃止と国防軍創設をあっさり撤回したことに、党内からは「今までやってきたことは何だったのか」(石破茂氏)と批判があがった。ベテラン政治記者の松田喬和・毎日新聞特別顧問が首相の豹変をこう指摘する。
「安倍首相のなんとしても憲法改正したいという気持ちはわかるが、これでは何のために憲法を変えるかの目的が不明。国家観が見えない。しかも、2020年という期限を区切ったことは、祖父の岸総理も含めて歴代総理の誰もできなかった改憲を、なんでもいいから自分が総理のうちに成し遂げたいという私心、功名心のようなものに突き動かされているように見える」
安倍首相がやろうとしているのは、中曽根氏が心を砕いた国民の思いに応える改正とは真逆の、「安倍の、安倍による、安倍のための改憲」なのだ。
※週刊ポスト2017年6月2日号