ライフ

【書評】やらせに違和感を抱く感受性はいつ形成されたのか

【書評】『感性文化論 〈終わり〉と〈はじまり〉の戦後昭和史』/渡辺裕・著/春秋社/2600円+税

【評者】井上章一(国際日本文化研究センター教授)

 市川崑の映画『東京オリンピック』は、オリンピック映画の傑作とされている。政府筋からは、日本人の活躍をあまりとりあげていない点などが、批判された。それで、文部省も、一度はきめた推薦をとりけしている。だが、芸術としての評価はゆるがない。

 そんな作品に、著者は今日的な観点から、注文をつけていく。たとえば、開会式の入場シーン。映画は、その場でながれた音楽も収録しているかのように、画面を構成した。しかし、じっさいの入場行進では、べつの音楽がひびいていたことを、著者はつきとめる。競技の映像についても、オリンピック終了後にあとで撮影した箇所が、あるという。

 今ふりかえれば、とうていドキュメントとは言いがたい。一種の「やらせ」ではないかと、著者はいう。だが、批判をするために、映画の作為をいちいちあばいているわけではない。

 著者は、画面に虚偽があると感じてしまう自分自身を、問いつめる。どうやら、一九六〇年代の人びとは、自分がひっかかったところをうけいれていたようだ。なのに、なぜ自分はわだかまりをおぼえてしまうのか。「やらせ」に違和感をいだく現代人の感受性は、いつどのように形成されたのだろう。こうして、著者は歴史の古い層をさぐっていく。

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン