今さらだが聞いてみたくなった。なぜ貴方はミステリーがお好きなのですか?
「アハハ。何ででしょうね。まあ、ミステリーの場合は趣味の延長が仕事になっていて、物事の隠れた構造を発見するのが好きではある。あと僕は今、趣味の一環で東海道を歩いていて、それも観光客が行かない山道や集落を歩くのが好きなんですよ。そう、宮本常一とか民俗学のスタンスですね。
ある共同体に分け入ると、思いもよらない世界があって、それを『面白いこともあるもんだ』って記録していくとか、今回のPTA本はそっちに近い。同じ町に住む親同士がまるで違うことを考えていたり、一言で言えば、面白かったんです」
自身、PTAに関しては〈ザァマス眼鏡〉をかけた教育ママゴン等々、漫画やドラマ由来のイメージしかなかったという杉江氏は、まず事前に現会長との会見を希望した。すると彼女は1年の仕事の流れを説明した上で、一つお願いがあるという。〈その金髪、黒く染めていただけませんか?〉
「そんなの、頼む前に言えばいいのにね。結局、金髪部分は全部刈り、ほぼ坊主にしてまで引き受けたのは、ライター特有の好奇心と、僕がうっかり者だからですよ。うちのPTAでは家庭教育研究委員会や校外活動委員会など、7つの委員会を2人の副会長が統括し、会長は会長で全体の調整や事務作業の傍ら、区の連絡会〈小P連〉に出たりした。特に4月はほぼ毎日、学校に通っていましたね」
4月。役員との初会合で〈チームプレイ〉の大切さを強調した会長は、併せて鎌田實氏の著書からとった〈がんばらない、をがんばろう〉を裏テーマに掲げた。