ネットオークションで落札したベースボール・マガジン社『相撲』一九九八年十一月号に「呼び出し身長体重番付」が載っている。重太郎は七十六キロで体重十四位にランクインしていた。九重部屋のちゃんこが美味しすぎて太ってはダイエットを繰り返しているそうだ。
身長一位体重三位(百七十九センチ、九十七・五キロ)の安喜夫(現・照喜)は序二段力士であったからうなずけるのだが、二位の琴吉に四十キロの差をつけてぶっちぎりの体重第一位は、百四十二・五キロの大吉だ。前年には百五十キロを超えていた(お腹に触ると麻雀で勝てる、と記者に人気)。
大吉は、力士志願だったが身長が足りず呼び出しになった。マンゴーのように張った全身から美声を響かせる。Aさんは「もしも自分が力士だったら大吉に呼び上げられたら絶対に勝てる、逆に某三役呼び出しだったらエネルギーが削がれてしまう」と言う。なるほど、大吉の太い声には「うん! がんばるぞ!」と思えてくる気がする。同時に対戦相手も大吉に呼ばれているわけだが、そこはAさんには気にならないらしい。
Aさんは血縁者のいる岩手出身の熊谷(現・錦木)を応援しているが、大吉以上に光っている人物は世界中をさがしてもいないと言った。グローバルに生きるAさんの目から見て、007ジェームズ・ボンド役のダニエル・クレイグもウィル・スミスも、大吉には遠く及ばないらしい。
現在相撲専門誌が三誌もあるのだから、呼び出し、行司、床山の身長体重を記載してほしいと切に願う(取組の際に力士よりも大柄な行司や呼び出しにおどろくことがあるのだが、そのサイズを調べようがなくさみしいのだ)。
先の五月場所前日の振れ太鼓を見に行ったのだが、重夫(一九九八年の九十キロよりはだいぶ絞れているように見える)がリーダーのチームに大吉もいて楽しかった。いつもは参加している重太郎の姿はなかったが、代わりにとても若い呼び出しが汗をかいて立ちまわっていた。