逃げ馬は調教で作るものではなく、自然とできてしまう。スタートが上手で、前に行ける馬が、ゲートを出た直後に抑えきれなくなる場合。ジョッキーはそのまま行かせてハナを切る。そのパターンのレースが続けば、逃げ馬のできあがりです。
なにやら気ままでわがままなスタイルですが、レースをこなす中で逃げ馬も進化します。ハナを切ってから後から追い上げがくるまでは、気ままに飛ばすことを我慢してペースを守って走る。やがて後続が迫ってくるとギアを変える。そのことを学習するわけです。だから前走の内容が悪くても、「次はうまく逃げれば期待できる」といったコメントが陣営から出てくるのです。
角居厩舎からは、逃げ馬はめったに出ません。ハナや最後尾は極端な競馬になりやすく、特にG1レースでは勝ち切るのは難しい。どんな展開にも耐えられるためには、スタートをうまく出て3、4番手につけること。前方にいることで前述のように馬は本能的な不安がなく、そして折り合いもつきやすいからです。
先週はダービーの展開についてお話ししましたが、その日の最終レース目黒記念でも展開の妙がありました。メイショウカドマツが大逃げを打ち、向こう正面で10馬身ほど引き離す。角居厩舎のハッピーモーメント(13番人気、川田将雅騎乗)は3番手につけて、差をつめることなくじっと動かない。メイショウカドマツが大逃げを打っているからこそ、楽に追走できた。