佐藤:私にはオウム真理教を支えたその価値観がロシアの闇とシンクロしたことがとても興味深かった。
片山:サリン事件発覚後、ロシアの教徒が麻原彰晃奪還を企てているという報道もありましたね。
佐藤:奪還計画は確かにありました。ロシアにはいまだに麻原彰晃を信じるカルトのコミューンがある。
片山:コミューンは複数あるんですか?
佐藤:いくつかあります。ロシアだけでなく、ウクライナにもある。日本の信者は1650人なのに対して、ロシアには2万4000人の信者がいる。
片山:それはすごい!
佐藤:極論かも知れませんが、オウム真理教とイスラム原理主義、あるいはキリスト教の違いは単なる数に過ぎないと思います。終末論的なドクトリンを内包する宗教は、キリスト教でもイスラム教でも暴発すればオウム真理教と同様の行動に走る危険性がある。
●さとう・まさる/1960年生まれ。1985年、同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。主な著書に『国家の罠』『自壊する帝国』など。共著に『新・リーダー論』『あぶない一神教』など。本誌連載5年分の論考をまとめた『世界観』(小学館新書)が発売中。
●かたやま・もりひで/1963年生まれ。慶應大学法学部教授。思想史研究家。慶應大学大学院法学研究科博士課程単位取得退学。『未完のファシズム』で司馬遼太郎賞受賞。近著に『近代天皇論』(島薗進氏との共著)。
※SAPIO2017年8月号