◆食道がん
臨床データなどでは放射線治療の成績が手術と遜色なく、「切らない」選択肢が積極的に検討される部位だ。消化器外科の手術経験が豊富な北野國空医師がいう。
「食道は喉と胃の間の約25cmの長さを繋ぐ大きな管であるため、胸を開く外科手術は負担が大きい。術後は深い呼吸ができなくなり、肺炎の発症に繋がりかねない。高齢者にはデメリットが目立つ手術です」
そのため、「高血圧や糖尿病などの持病がある65歳以上や持病がなくても75歳以上の高齢者は、より侵襲行為が少ない放射線治療と抗がん剤の併用をしたほうが結果的に長生きできる」(医療ジャーナリスト・油井香代子氏)という。
◆胃がん
胃がんでは「現在では4割が腹腔鏡手術」(前出・富家氏)という。
「腹腔鏡手術は患部近くに数か所の穴を開け、そこからスコープや器具を挿入する。患者の体への負担が少ないですが、手術の難度が高いため、医師の技術によってリスクが大きく変わってしまう。
最近は『ESD』(内視鏡的粘膜下層剥離術)という最新手術法も、受けられる病院は限られているものの、普及しつつある。内視鏡の先端から小さな電気メスで患部をはぎ取るもので、従来の内視鏡では切除できなかった大きな腫瘍も切除できる。
このような低リスクの手術を提示せず、切除手術を勧めてくる病院は要注意です。高齢者が切除手術をすれば、たとえ成功しても胃ろうをすることになり、残りの人生のQOLを著しく下げる。結果、体力が落ち合併症で死亡するケースまであります」(同前)
※週刊ポスト2017年8月18・25日号