片山:非常に罪深い政策でしたね。しかもいまだに修正不能のままです。政権交代が起こりやすい2大政党政治を目指した小沢一郎が小選挙区制を導入し、メディアや政治学者が旗を振った。いまになって彼らは、資質が乏しい政治家を生んだ政権を批判していますが、もう手遅れです。
佐藤:小選挙区制への移行で決定的だったのが、旧社会党のなかの左翼だった労農派マルクス主義勢力が駆逐されてしまったこと。歴史的に日本の社会党を引っ張ってきた左翼社民がいなくなってしまった。同時に土井たか子さんや辻元清美さんら右翼社民が台頭した。小選挙区制の結果、政治全体が右にシフトしてしまったんです。
片山:2大政党制になれば、政治のバランスがよくなるというのは、日本の政治風土を無視した「絵に描いた餅」でした。
日本の2大政党制の根底には、政権交代で政治腐敗を一掃するという発想がある。端的に言えば、腐敗撲滅が第一で、政党のイデオロギーや主義主張を軽んじる、本末転倒とも言える議論があの頃、横行しました。
佐藤:腐敗を絶対に許さない空気は政治の世界だけでなく、社会全体に広がっていきました。
1997年に起きた第一勧業銀行と4大証券会社による総会屋利益供与事件もそうです。株の世界がきれいごとで動いているなんて、誰も思っていなかった。にもかかわらず、それまで黙認されていた利益供与を摘発した。これは1992年に施行された暴対法とも密接に関係している。