国際情報

釜山の若者との対話【第3回】慰安婦、軍艦島の質問に焦る

講演する森氏

 ジャーナリストの森健氏は7月、韓国・釜山の中高生と対話するために当地を訪れた。「ジャーナリストレポート・釜山の若者との対話」。最終回となる第3回はいよいよ合宿での質疑応答である。

 * * *
 韓国・釜山にある出版社「インディゴ書院」と釜山広域市の教育局の主催によるカルチャー教育の合宿「ユースキャンプ2017」。

 私が呼ばれた講演は7月7~8日と14~15日の2回。キャンプ全体の目標が「希望」だったが、14歳から16歳の中高生が関心を抱けそうな日本への関心事で大きいものはやはり東日本大震災とのことで、「震災と中高生」というテーマになった。

 時間はいずれも90分。本来講演では質疑応答は10~15分というケースが一般的だが、今回は50分を質疑応答の対話にあてることにした。

「たしかにそのほうが、子どもたちも興味がもてるかもしれないですね」

 市の教育局の課長もそんな案に前向きだった。

 だが、始めてみると、その出だしはひっくり返りそうな質問が飛び出した。

 誰か質問したい人は手をあげて──。司会のスタッフが声をかけて、手があがったのは5人ぐらいだった。初回の講演は19時スタートで、夕食の後というスケジュール。壇上から200人のほどの14歳を眺めていると、眠たそうな顔も多かった。

 そんな中、ホールの真ん中あたりに座っていた男子生徒を指すと、彼は丁寧にお辞儀をし、お話おもしろかったです、と言って、こう続けた。

「ところで、森さんは慰安婦問題をどう考えていますか」

 いきなりその問題から来るとは想像していなかった。

 会場の生徒もざわざわとなったが、ここで詳細な議論をする余裕もない。そこで、かつて日本の軍隊が心ないことをして、同じ日本人としては申し訳ないと思っているが、早く解決できればと思っている──そう答えると、男子生徒は「わかりました」と、わかったような、わからないような無表情で応じた。

 その後数人、被災地の現状や子どもたちのその後について質問があったのち、また、テーマとは異なる質問が寄せられた。今度はメガネをかけた真面目そうな女子生徒だった。

「森さんは、ハシマ問題をどう考えますか」

 ハシマ……聞いたことがあるが、何のことだったか。文字が浮かぶのに数秒かかった。

 思い出した。端島──軍艦島のことだ。

「あなたの言っているのは、軍艦島の強制徴用の問題?」

 尋ねると、女子生徒はうんうんと頷いた。またも政治問題だった。

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン