とはいえ、安倍首相がいくら前のめりになっていても、北朝鮮側が受け入れなければ小泉特使は実現できない。

 日朝間では、8月6日に行なわれたASEAN関連外相会議の夕食会の際、河野太郎・外相が北朝鮮の李容浩・外相と2年ぶりに意見を交わし、李外相側が「対話」を求めたことを読売新聞が報じている(8月15日付朝刊)。日米朝の間で水面下の動きがあることがうかがわれる上、トランプ大統領の「あるかもしれないし、ないかもしれないが、恐らく何か良いことが起こるだろう」(8月22日)の発言も意味深だ。

 小泉氏が電撃訪朝して金正恩氏の父・金正日氏と歴史的な日朝首脳会談を行ない、「日朝平壌宣言」に署名したのが2002年9月17日だった。今回の“小泉特使”の訪朝もちょうど15年目となる9月中旬を軸に調整が進められているとの説もある。政治評論家の有馬晴海氏はこんな見立てをする。

「安倍さんはいま支持率を上げるためには何でもやるというくらい焦っている。訪朝はビッグチャンスだが、『私の内閣で拉致被害者を全員帰国させる』と公約している手前、安倍首相自身が出張って拉致問題がゼロ回答では国民は納得しない。しかし、今回の特使の役割は弾道ミサイル危機を回避するための米朝間の橋渡しにあり、北朝鮮側が日本人拉致被害者を帰国させるとは考えにくく、安倍訪朝はリスクが大きすぎる。そこですがるような気持ちで小泉さんに頼んでいるのではないでしょうか」

 かつての小泉訪朝では小泉内閣の支持率が急上昇した。だからといってトリプル補選前に“小泉身代わり訪朝”が成功しても、支持率回復の効果がどの程度のものになるかは誰にも分からない。だが、ライフワークを自任する拉致問題や北朝鮮外交さえ、いまや自力では何もできなくなった状況が、行き詰まった安倍首相の焦りを物語っている。

※週刊ポスト2017年9月8日号

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