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大村崑が選ぶ大相撲名勝負 運命の筋書きに鳥肌が立った一番

芸能界きっての好角家が名勝負を語る(写真:時事通信フォト)

 相撲好きな人ならば、誰しも必ず「忘れられない一番」があるはず。芸能界きっての相撲ファンとして知られる俳優の大村崑氏が選んだ「心に残る一番」は、1991年夏場所初日の貴花田対千代の富士戦だ。貴花田が千代の富士に引導を渡した名勝負について、大村氏が振り返る。

 * * *
 双葉山はもちろん、栃若、柏鵬時代は立ち合いでの手つきが不十分だった。立ち合いで8割が決まるといわれ、手つきを徹底させた近年に比べて不公平な時代だった。そのためこの時代の相撲は名勝負には取り上げたくないですね。

 そうなれば、名勝負はやはり若貴時代の幕開けのきっかけとなったこの一番でしょう。優勝回数31回で、35歳11か月の横綱・千代の富士と、西前頭筆頭で18歳9か月の貴花田(後の横綱・貴乃花)との対戦。大相撲ファン待望の初顔合わせでした。

 千代の富士が左から張って左上手を狙うと、貴花田は右を差し、頭をつけて千代の富士に上手を与えなかった。さらに右からおっつけた貴花田に対し、右を殺された千代の富士は左へ回って左から突き落とそうとしたが、貴乃花は難なくついていった。

 父親(元大関・貴ノ花)譲りの足腰の良さをみせると、さらに左上手を引いた。相撲巧者の千代の富士は右かいな捻りで左上手を切ったが、貴花田はかまわず前に出る。そして左へ左へと逃げながら、右手で首を押さえて叩き落とそうとする千代の富士についていって寄り切った。貴花田の完勝でした。

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