国内

日本の「産業観光」 広がらなかった背景に戦争と公害

モノづくりの現場や遺産などが観光名所として人気(『産業観光ガイド』HPより)

“モノづくり大国・日本”などといわれるように、日本には多くの産業が存在する。その現場を目で見ながら、その成り立ちや歴史などを知ることができるのが、産業観光の特徴だ。

 そもそも産業観光とは、「歴史的・文化的価値のある産業文化財や生産現場、産業製品を、観光資源とすること」と定義されている。

 代表的なものとしては、工場見学やダム観光、陶器づくり体験などがあり、日本観光振興協会が運営するサイト『産業観光ガイド』に登録されている施設だけでも500以上。小さな町工場なども含めるとおびただしい数となり、まだ正確な数字はわかっていない。発展途上の観光といえる。

 だが、なぜその土地でその産業が盛んになったのか、歴史的背景を知ることで、日本の産業の広がりがわかる、と日本観光振興協会主任研究員の森岡順子さんは言う。

「産業観光の中には、軍艦島のように世界遺産になっているものもあり、そのほとんどが、1つの施設というより、その地域全体の産業で成り立っています。例えばお城の瓦ひとつとっても、作られた場所があり、運んできた人がいるわけです。そのように、漠然とお城を見るのではなく、1つ1つの成り立ちや背景を知ることで、その土地がどのように栄えたのかを改めて再発見することができる。それが産業観光の魅力の1つといえます」

 ただ、名所を見学するツアーと違い、学べることが多いこともあってか、産業観光の年間参加者数は、7000万人を超え(2010年経済産業省調べ)ており、中高年の参加者も多いという。

「産業観光は、わが国の近代化を担った技術革新や産業構造の変革などの近代化遺産を、観光地として活用しながら保護するものでもあります。また、その土地で生まれた産業を知ってもらうために観光化することで、多くの人がその土地に足を運び、経済もうるおう。町おこしやその土地へ還元するために、産業観光を積極的に行う企業もあります」(森岡さん・以下同)

◆大きなきっかけはイギリスの産業革命

関連キーワード

関連記事

トピックス

オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン